「将棋と認知科学」講演会メモ


 講演内容についてはもずさんはてなダイヤリーを参照下さい。おおざっぱなメモと謙遜されていますが詳細に箇条書きされていますし、関連記事リンク集もあります。比べて読んでみると様々な角度からこの講演を楽しめますよ。ここでは MYCOM の記事をリンクしておきます。

 というわけで立派なレポートがたくさんあるので、ここでは羽生善治四冠が松原仁氏の質問に回答する形で行われた講演会の内容を本格的に扱うつもりはなくて。まあその周辺のことを少し書こうかなと。

 この講演は認知科学会という団体が主催しているもので、普段は一般に公開されていないのですが20周年記念ということで公開したんだそうです。道理で講堂の音響施設やら照明やらマイクパフォーマンスやらがこなれていないなと。例えば講堂に備え付けのスピーカーから出る音は幾分こもっているように聞こえましたし、照明も夕方のように視界が狭くなるような按配の暗さでしたので、スクリーンに映し出された映像が見づらかったです(座っている場所がやや後ろだったこともあるかな)。最初に羽生、松原両氏を紹介した伊藤氏もカツゼツがよくないし声が小さいしで、「大丈夫かなこの講演」、という気になってしまいました。流石にこういう舞台を何度も踏んでいる羽生四冠はハキハキと発言していましたけれども。

 松原氏の話の進め方は割合よかったですね。冒頭に将棋というゲームの特性をあげ、一般方でもわかるように解説していました。その後「思考心理学から見た将棋」「学習、発達、教育からみた将棋」「心理作用からみた将棋」「ゲームとしての将棋」という4つのテーマを元に話を進めていくのですが、時間が短いためなのか質問し方が悪いのか、深く掘り下げられることがなかったのは不満です。例えば、相手の得意形を避けるか否か、という問いに対して羽生四冠は「プロ棋士は120人ほどいますが、実際当たるには小数で、同じ人と何度も当たる。だから得意形を避けるのは得策とはいえない」といっていましたが、ホントかなとか。例えば丸山棋王などは相手の得意形を避ける、というか自分の得意形しか指さないですよね(先手角換わり、後手8五飛、対振り飛車には穴熊)。で、結果を出しているんですけれど、その考えとは相容れないわけで。そのあたりのところをもっと突っ込んで欲しかったりとか。

 早いうちに将棋を覚えた棋士は、子供時代に指していた無茶な手がベースになっているので柔軟な手が出やすく、ある程度の年齢になってから覚えた棋士は定跡にぴったりはまった将棋を指してくる、とも語っていましたが、「カニカニ銀」の児玉八段は晩学の棋士だったと聞きます。この例外についてはどう考えているのか、とかね。しかし一般の方も大勢いたでしょうから、あんまりマニアックな質問なんてできなかったのかもしれないです。

 質疑応答もあれです、質問者もカツゼツが悪いし、質問の仕方も悪い。質問内容は一つに絞って欲しかったな。

 っつーか、全体的に講演するならもっと観客の立場に立って、聞きやすくしたり見やすくしたりもっと工夫して欲しかったなと。エンターテイメントして欲しかったなと、まあそういうことです、私の要求は。内容だけでなく、伝える工夫もね、必要ですよと。

 ところで、こういう講演の主賓ってさ、普通送迎ぐらいあってもいいと思うのだけれど。講演の1時間半ほど前、羽生四冠と松原氏が大学前をとことこ歩いてましたよ。流石に扱い、酷くない? っつーか日本将棋連盟も気を使ってくれよ……。


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初版公開:2003年6月11日 最終更新:2003年6月21日
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