将棋パソコンに勝算はあるのか

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 諸兄は将棋パソコン「FLORA王将」なるものをご存じか。日立ダイレクトというパソコン通販を行っている企業が発売している商品なんですけれど。特徴がなんでも、社団法人日本将棋連盟の推奨、”将棋を指す、学ぶ、楽しむ”ことができる機能&ソフトウェアを搭載、優れた静音性によりシーンと静まった緊張感の中で手にマウスを握る真剣勝負が楽しめる、らしい。この特徴、果たして消費者のニーズと合致しているんでしょうか。最安のデスクトップ、A4ノートが263,000円もするんですけどね。さて、一つづつ見ていきましょうか。

社団法人日本将棋連盟の推奨

 そりゃ、日本将棋連盟のおいしいスポンサーですもの。推奨だって何だってくれてやるというものですよ。子会社である日本将棋ネットワーク(NSN)の目玉である日立杯選手権(優勝賞金200万円)を提供してくれているんですからね。第一”推奨”したところで日本将棋連盟に責任が発生するわけでもないし。メーカーにとっては箔がつくし、日本将棋連盟にとっては資金提供してもらえるわけですね。しかしその資金はユーザからむしり取ったモノであるわけですよ。それを考えると、ねえ。

”将棋を指す、学ぶ、楽しむ”ことができる機能&ソフトウェアを搭載

 ネット対戦用に「NSN接続プログラム」、一人遊び用に「激指」、棋譜鑑賞用に「将棋年鑑CD-ROM2001」と「棋譜Data 1998-2000Vol.1」がついているんですが…。こんなマニアックなパソコンを購入する人なら、これらのソフトはみんな持っていると思うんですよね。NSNなんて一ヶ月無料というせこさ。呆れますよねえ。C会員だと月会費5,800円ですよ。暴利もいいところだと思いませんか? 棋譜Dataだって、もっと過去のデータもあるんですからどうせならそれぐらい付属しろといいたい。あるいは今後のデータは無料で配布とか。「激指」は定価9,800円、「将棋年鑑CD-ROM2001」8,000円、「棋譜Data 1998-2000Vol.1」7,000円ですから、合計24,800円分を無駄に支払ったことになるんですよ。

 それに、ネット将棋を楽しみたいだけの初心者なら、これらのソフトはまーったく不要です。将棋倶楽部24で遊べばいいし、棋譜はフリーのソフトを使えばいつでも閲覧できますから。つまり消費者の狙いが絞り切れていなくて、とりあえず全部盛り込んじゃえ、という適当な商品スペックなんですよ。

優れた静音性によりシーンと静まった緊張感の中で手にマウスを握る真剣勝負が楽しめる

 家庭事情にも寄ると思うんですが、静音とは外部にも関連しておりますので、パソコンだけが静かでも回りが騒がしければまーったく意味をなさないと思いませんか? よほど防音効果がある部屋に住むか、人里離れた場所に一人で住むとかしないと、雑音はどこかからは聞こえてくるものです。また、一度集中してしまえば雑音なんて気にならなくなりますし。優れた静音性がアピール対象になるとは思えないですね。

 というわけたいした特徴でもない「FLORA王将」に263,000円もだそうだなんて誰が考えるのでしょうか? 開発した人もホントに売るつもりだったのでしょうか。まったく理解できません。デルの安くて高機能なノートで十分です(将棋タウンのレポート参照)。ソフトなんて欲しけりゃ買いますし。

 将棋に特化したハードを売るつもりなら、もっと購買者を絞るべきです。ネット将棋の初心者をメインにするとか、将棋マニア向けにするとか。購買者を想定すれば、おのずと提供するサービスも決まってくるでしょ。第一、他のメーカーのパソコンと比べて明らかに高価すぎます。こんなパソコン買うのは、金の余ってる老人か、税金の意味をわかっていない公共団体(学校とか)ぐらいでしょうねえ。本気で商売する気あるんですか?


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初版公開:2002年8月17日 最終更新日:2003年1月15日
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