絶版棋書に愛の手を

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 ネット上で「良書」などと紹介されている古い棋書を手に入れようと思っても、日本将棋連盟のものを除いて(過去の書籍を改訂せずカバーを替えて販売しています)、手に入らないのが通例であります。世に言う良書というものは、絶版になって初めてその有り難味がわかるものらしい。読者が限定される将棋本は、よほど捌けることが期待されない限り再版されることはありません。

 とはいえ、我々も黙って指をくわえていてもしょうがない。どうにかして絶版棋書を手に入れようと古書店へ行くわけですが、専門店では定価の数倍もします。ネット古書店も結構なお値段ですし、オークションで発見しても値段高騰は必至、といった状況です。なんとか手頃な価格で絶版棋書を手に入れることはできないものでしょうか。

 一つは、出版社に再版の提案をすることが挙げられるますね。具体的には絶版棋書の電子化が考えられます。

 コストを押さえた再版手段としての電子化はよくある手段です。CD-ROM 一枚で何冊入るかはよく分かりませんが、書籍化することに比べれば在庫コスト・リスクは少なくて済むはず。ただし、将棋道場の書籍版が売れているという現象を考えると、安易な電子化は危険かも。パソコンの普及率や棋書の購入率といったアンケートを一度取ってみて、よくリサーチする必要はありますね。

 あと、文庫化することでコストは下がるのかな(値段も利益も下がりそうだけど)。だとするとそういった方面の再版も検討して欲しい。とにかく安価で、いつでも手に入れることができるとうれしいんですよね。

 ネット上での活動だと、復刊ドットコムへの投票でしょうか。

 現在復刊ドットコムに将棋特集というコーナーが設置されており、いくつかリクエストされております。登録されている棋書の中には紛れもない奇書もありますけれど(笑)、寄せの手筋168角換わり腰掛銀研究相振り革命といった良書とされている書籍が名を連ねております。100票集まると、復刊ドットコムのスタッフが出版社に再販交渉をしてくれますので、気になったものがあったら投票に協力する、というのもひとつの手段です。例え100票に達し、交渉までいったとしても、必ずしも復刊できるかどうかはわからないんですけれどね。まあ、やらないよりはやったほうがいい、という程度でしょうか。

 また、絶版になるまえに書評を残しておきその棋書の重要度が分かるようにまとめておけば、おいそれと絶版にできないと思うんですけれどね。誰がまとめるか、とかどんな基準で重要度を測るのか、等問題はありますが、そうでもしないとすぐに技術(棋書)は失われてしまうのですよねえ。車輪の再発明という愚はもう犯したくないでしょ?

 おそらくですけど、例えば四間飛車に精通している人がいますよね。で、出版された四間飛車本をチェックする。変化内容が今までにない変化が多数含まれていれば、重要度アップ。逆に以前に出版されている本とたいして差異がなければ、その本の存在意義はないので絶版になっても問題なし。といった具合。ダメさ加減もきちんと書き残しておくとよいかもしれません。

 大体、棋書の批評作業が行われていない体制がそもそもの問題だったりするんじゃないかと思ったりします。新刊紹介のみで、その棋書が今までの棋書と比べてどうなのか、といった批評がどこかに掲載されたなんて話寡聞にして耳にしたことがありません。だから良書も悪書といっしょに絶版の道を辿らざるを得なかったのではないか。

 きちんと評価すれば、良書は生き残る。で、こうして残っていった書籍を数年に一度総括すれば、将棋大辞典が完成する、可能性がある。誰もやらないというのならその作業、私の老後の楽しみにしようと思います(笑)。


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初版公開:2002年8月24日 最終更新日:2002年8月31日
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