某温泉宿。
「今回は趣向を変え、早めに夏休みをとって湯治へやってきました」
「たまにはこういうヒナビた宿でのんびり温泉につかりながら対談するのもいいもんだね」
「そうね。地酒がまたうまくてさあ、たまらんよ」
「じゃ酔いが回ってロレツが回らなくなる前にさっさと予想しておきましょうか」
「えーっと、現在までの結果は三浦二勝、森下二敗、残りは一勝一敗か。波乱の幕開けだなこりゃ」
「そうなんだよ。我らが谷川先生も一回戦の羽生四冠を矢倉で降して、いいスタートを切ったと思ったら青野九段に負けてしまった。どうやら後手番だった谷川先生の8五飛戦法に対して青野九段が新手を出して勝ったそうだ」
「確か早めに▲3六歩と突くんだっけ」
「うん。横歩を取っているので飛車が3筋にいるにもかかわらず真後ろの歩を突くんだからちょっと気づきにくい」
「いま羽生王位に挑戦中の谷川先生が第二局に少し形が違うけれど青野新手を利用して勝利をもぎ取ったんだから、採算は取れているのかもしれないね」
「それにしても青野の健闘ぶりは賞賛に値するな。あの年齢でA級に残っているんだから凄いよ」
「今年A級に復帰した島がいっていたけれど、順位戦は先後が決まっているから作戦家タイプの棋士には有利な棋戦らしい。つまり青野にあっているんじゃないかな」
「なるほど、いえているかも」
「羽生は二回戦で佐藤二冠をブレイクして挑戦者戦線にしっかり残ってきたね」
「絶好調の佐藤を破ったのだからこれは大きいと思う。たしかこれ、佐藤二冠は後手番で振り穴だったんじゃなかったっけ。対する羽生も居飛穴って将棋。最近の佐藤はいろんな戦形を試している気がする。なんだか昔の羽生みたいだよ(笑)」
「そうね。なんだかんだで結局成績も残しているしね。二冠っていうのも大きな自信になっているはず。すべてがいいほうに向かっているみたい」
「だから挑戦者筆頭に挙げても問題ないと思うんだけど、いまの勢いが一年持つかというとなんともいえないんだよな」
「そうか? 結構数年突っ走りそうな勢いを感じるけど」
「特に今年の後半はタイトル防衛に忙殺されそうな予感がするんだよな。で、調子を落とすのではないか、という読み」
「でもかなり挑戦者に近い存在ではあるでしょ?」
「そうね。それは否定しないよ(笑)。我らが谷川先生はどうなんだ?」
「まずは王位を奪取できるかどうかで今年を占えるんじゃないですかね。奪取できれば名人挑戦者争いにも絡めるし、できなければ無理かも、って踏んでる」
「それぐらいの危機感がないと難しいのかもしれないな。特に今期は混戦が予想されるしね。羽生、藤井、丸山も居るし独走はなさそうだ」
「ところで、二連勝の三浦なんですが彼はどこまで行きますかね」
「前の戯言でからかって見たけれど、もしかしたら、という気持ちがあるんだよな。あの千日手も厭わない勝利への執念は、名人位を盗った丸山に通じるものがあるからな」
「前名人丸山や前竜王藤井はどうでしょうね。二人とも失冠の痛手から立ち直っているとはまだ思えないんですが」
「印象からすると今年は絡んでこなさそうだな。後半調子を上げてくると思うけれどね」
「じゃ本サイトの61期A級順位戦予想を決めましょう」
「本命谷川九段(願望)、対抗佐藤二冠、羽生四冠、穴三浦八段ってどうよ?」
「また今年も多く挙げましたね。こりゃ流石に当たるでしょうねえ」
「多分ね(笑)。じゃ降級争いを予想してみるか」
「森下は今年ピンチかも。二連敗しているし、何より変愚痴老が森下活躍を予想していましたし(笑)」
「あの人が煽った将棋指しは伸びないらしいからなあ。渡邊四段なんていい面の皮だったろう。可愛そうに」
「その隙を突いて、山崎、松尾、宮田らが活躍しているともいえるかもしれませんねえ。しかし羽生世代以降でめぼしい新人はこのぐらいでしょうか」
「わしの好みからすると、久保、行方、堀口なんかも悪くないと思うけどな。まあ全然羽生世代の輝きには遠いけれどもね」
「まあその話はまたするとして、森下はやばいですかね。僕なんかは三浦、島って線があるかと思うんですが」
「あとやはり青野先生は厳しいかもねえ。棋力というより体力、執念という点でね」
「とすると降級候補は、森下、青野、三浦、島ですか。またこれも予想人数多いっすねえ」
「じゃ、島、青野でどうだっ」
「うーん、差し障りない面子だと思います。面白みに欠けますが」
「それじゃあ今年はこんな感じで」