double crown's diary(2004年9月)

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04.09.29 雨

▼杏フィルター、ようやく無人更新機能を獲得。そんでもって、『Spidering hacks』に書かれている作業負荷削減機能も組み込んだり、 robots.txt を尊重したりした。ようやく公に宣伝できる機能が揃ったぞと。って、ここまで来るのに一年掛かっているのは技術者としてどうなのかと。
▼ジャック・フィニイ『夢の10セント銀貨』(ハヤカワ文庫)読了。苦い大人のファンタジー。愛していた妻も時が流れて疎ましくなったり、仕事が嫌になった主人公がパラレルワールドに迷い込む。そこの世界は自分がいた世界よりちょっぴり変わっていた。自分はいるんだが、前の世界に比べものにならないぐらい恵まれている。最初はその世界の快適さに満足するけれど、結局昔の情けない世界に戻っていくという……。前半の空虚な夫婦の描写は泣けてくるほどリアルだな。後半の、その計画は明らかにバレるぞ、というご都合主義的な展開とセットになっているのか。まあ、なんつーか、笑えなかったよ。年を喰ったということだとはよくわかっているんだが。
▼ロジェ・カイヨワ『遊びと人間』(講談社学術文庫)読了。途中で放っていたのを継いで読んでみたが繋がりがわからず、惰性でそのままだらだらと流し読み。購入当初は「遊び」に興味があっと思われる。
▼ウィリアム・A. オールコット『絶対満足のいく生きかた』(知的生きかた文庫)読了。いわゆる自己啓発本。本書より100年前に出たスマイルズの『自助論』で用は足りているのでそれを読んでいるひとには必要なし。

04.09.26 雨

▼昨日キリンジのライブへ。スタンディングは三十路には辛いなー(疲)。回りは若い人ばかりじゃったよ。前半どうも歌声とバックの音楽の音量が合っていなかったように思えたけれど、後半のYOU AND MEあたりから気持ちよくなってきたよ。つーわけで追加公演にも参加予定。
▼浅倉卓弥『四日間の奇蹟』(宝島社文庫)読了。奇蹟のアイディア自体は先行類似作品があるそうだが、しかしあれだ、この程度はどこにでも見るような話でさ。キモはやっぱし話の運び方というか。スルスル頭に入っていく力量っていうのは、やっぱしあると思うし少なくとも先が気になって頁を繰ったよ。しかしあまりに俗なアイディアだったのでちょっと冷めたのは事実。ミステリーというよりは甘口ファンタジーですな。
▼ピーコ『片目を失って見えてきたもの』(文春文庫PLUS)読了。なにげにブックオフで手に取った本だというのに受けた衝撃はかなりのものがあったぞこれは。ピーコが感じた人間としてのあり方っていうのかしら、それが彼?の人生を振り返りつつ朴訥と語られているわけです。テレビで演じているキワモノ的姿の裏にある人間のもう一つの顔というか。30歳を越えて社会や家族との折り合いに疲れた男女に勧めます。救われる部分もあると思うよ。
▼歯周病っていうんですか。歯茎がぶよぶよになってきているし、歯石は溜まっているしで、歯医者に通い始めたんですが。超音波で歯石を破壊する機械がなあ。歯と歯茎の合間に先の尖った鉄棒を突っ込んでガリガリガリガリ……。神経に響くし、出血しまくるしもう大変。確かに口の中は綺麗になったけれどさあ。
▼最近コンタクトを作ったんだけれど、なかなかうまくはめることができなくて。いつになったら慣れるのだろう?

04.09.22 晴れ

▼先の三連休、大阪に一族が集い祖母の米寿&我が両親の還暦祝いを行った。金欠故に東京組は夜行バスで行ったのだが、あれだ、もう無理が利かない体になったのだなと痛感した。寝汗と体の強ばり具合が酷く予定通り大阪城近くの銭湯へ行き体をほぐした。銭湯なんて久しぶりだなーとか思ってまったり。朝風呂が自慢のその銭湯には、肉体労働者や近所のおじさんおばさん、若い夫婦までマイ銭湯セットを小脇に抱えて出入りしていた。懐かしい風景だったな。
▼6年前に会いに行ったときのお婆さんは、よくいる大阪の元気なお婆さんで早口で世間話をしていたっけ。久しぶりに会ったというのに私の好物である茶碗蒸しを覚えて作ってくれた。そのすぐあと、転んで足だか腰だかの骨を折ってしまい車椅子生活になってしまい、身の回りのことをしなくなってしまってから、痴呆が始まってしまい、先日会っても僕が誰だかわからないようだった。もっとも実の息子の顔も忘れてしまっていたけれど。
▼小太りだったお婆さんは施設に入ってすっかり痩せてしまった。風船が萎んだ感じ。兄妹で「ちっさくなってしまったなあ」とため息がでた。あんなに元気だったのにな。
▼そのあと両親を連れて今度は大阪は池田市にある温泉に接待。こんな親孝行はもうないだろうということで、相当奮発してやったぞコン畜生。おまけに感謝状と称して、今まで育ててくれてありがとう的な文章を妹に書かせて朗読するという、プレゼント代をケチり作戦を決行、割と成果があってよかった。
▼つーかまー準備に4ヵ月前から動いていた自分を褒めてあげたい。十数年前ぶりに話す親戚と連絡を取ったりしたのがしんどかった。ま、普通の人ならやっていることなんだろうけれど、今までそういった分野を避けていたからさ、大変だったさ。これで少しは大人に近づけた、かもしれん。大人の人って凄いね。
▼来週はキリンジのライブ。自分へのご褒美ということですよ。
▼最近読んだ本。
▼池波正太郎『江戸切絵図散歩』(新潮文庫)読了。これは今読んじゃ駄目だった。池波本を読破して作品の世界を熟知してから読まないと楽しめない。池波の食事本と同じ感覚で読む訳にはいかないね。食事には人間誰しも執着や一家言はあるから作品世界を知らなくても自分の趣味と照らし合わせて玩味できるんだけれどね。
▼鴻上尚史『名セリフ!』(文藝春秋)読了。古今東西の名ゼリフ31編についてあーだこーだと解説した本。解説しなくちゃならないほど、一般人から遠く離れてしまっているんだなあとしみじみしちゃう。鴻上はそれぞれを声を出して読んでみてくれ、というけれど、セリフだけじゃ駄目で、輪読というのかみんな車座になって初めから終わりまで読み合わせて初めて意味があるんではないかと。セリフだけが独立しているわけじゃないからな。ってそういう特殊な環境なんて世間にあるんだろうか。セリフ読み合わせ喫茶とか。なんだそれは。
▼『勝負の世界―将棋VS囲碁対談五番勝負 芸・華・道』(毎日コミュニケーションズ)読了。囲碁と将棋の世界の相違が面白いなあ。例えば、囲碁では基本的にプラスの手しかない。如何に点数の高い手を指すかが主眼となる。将棋には指すとマイナスになる手がある。だから相手が良い手を指さなくても負けてしまうことがある、とか。ま芹沢博文と藤沢秀行との対談が一番ですね。デタラメなことやってますよ、彼らは。あと、芹沢は「羽生は名人になれない」と発言している(笑)。
▼奥山紅樹『盤上に賭ける―プロとアマの間』(晩聲社)読了。30年も前から、レッスンプロを作ろうとか、「将棋の強さだけ」をプロ棋士の成立基盤にしてはならない、アマに負けたプロの価値がなくなってしまう、そうではなくて、「将棋の普及する」ことを主眼にしたプロ棋士のあり方を模索していたりとか、対局者のキツイ心理状態、仲間内からの評価を載せてしまう覚悟とか、まあなんとも刺激的な将棋本でした。触発されて今将棋戯言をまとめているんだけれど、うまくまとまんない。んー。
▼渡部昇一,米長邦雄『人間における運の研究』(致知出版社)読了。米長名人就任祝いのどさくさに出版された本、としかいえない。著者双方の本を読んでいる人なら改めて読む必要なないかと。逆に両者の入門本としても中途半端なような。まあマニア向けです。
▼山本一郎『投資情報のカラクリ』(ソフトバンクパブリッシング)読了。前著に比べて砕けた表現の大幅な削減が残念。もっと笑いたかったなー。本書が妥当かどうかは例によってわかりませんが。
▼団鬼六『鬼六の将棋十八番勝負』(小学館文庫)読了。鬼六を慕う若き先崎、行方の言動が彼ららしくて納得したり。あと勝浦九段が林葉元女流をしかりとばした件とか、知らない棋界情報が時折挿入されていて将棋好きならどうぞって感じだな。

04.09.14 晴れ

▼谷沢永一『400字で読み解く明快人間史』(海竜社)読了。僕は谷沢氏のファンなので買ってしまったのだが期待ハズレだなあ。各時代の重要人物の思想の勘所を400字で抜きだそうとしたのがそもそも無茶。明快と題名で謳っているものの言葉足らずになってしまい、逆に首を傾げたり納得するのに時間がかかってしまう。ただ出てくる人物や書物については一級品ばかりなので、メモっておきそれぞれの著作を読むようにする、これが正しい使い方だと思う。とはいえ、谷沢本ばかり読んでいる人だったら分かると思うがだいたい推薦している人物、著作に新鮮味がないのだよ。ああ、そういや読まないといけない本あったよなー、と思い出させてくれただけでもよしとするか。
▼谷沢永一『嫉妬する人、される人』(幻冬舎)読了。嫉妬について歴史上の人物の人間関係から抽出し柔らかく解説している。いつもの毒舌はどこにいったのかと訝ってしまうほどだよ。なにかあったのか(笑)。特に日本人向けに編集されているから上司や同僚との人間関係に悩んでいる人にはいいかもな。この間会社の人と飲んだときに、まさに本書のような嫉妬によるバトルの一部始終を聴かされところだったので、しみじみしたけれどね、僕は。

04.09.12 晴れ

▼福田和也『人でなし稼業』(新潮文庫)読了。毒舌オンパレード。よく文庫になったなあ、ってぐらい凄い。一気に読んだら気分悪くなった。ので、一日一編読むようにしたほうがいいと思うねえ。
▼デイヴィッド・ブリン『ファウンデーションの勝利(上)』『ファウンデーションの勝利(下)』(ハヤカワ文庫)読了。あの銀河帝国興亡史シリーズ、ロボットシリーズの隙間をうまく繋いでいたなあ。ブリン、凄ぇ。彼の「知性化」シリーズ、読んでみようかという気にさせられた。
▼『Spidering hacks―ウェブ情報ラクラク取得テクニック101選』(オライリー・ジャパン)読了。っつーか勉強中。杏フィルターの参考になるなる。

04.09.06 晴れ

▼山本一郎『美人(ブス)投票入門』(オーエス出版)。大笑いしながら読了。切込隊長の読ませる文体は凄いねえ。罵倒の台詞一つ一つに愛を感じるよ(笑)。投資の入門書としても十分価値があると思う。ただし文体はクセが強いから毛嫌いする人もいるでしょう。
杏フィルターですが、現在一部でローカルサーバでリンク収集、HTML生成、レンタルサーバ転送を行っています。それはいいのですが、そうすると他の方に使って頂くためにはサーバを公開するしかないかなあ。うーん。

04.09.05 雨

▼山下哲『ファイヤーキングマグ図鑑』(河出書房新社)堪能。アンティークマグカップの図鑑。カラフルなマグカップをぼーっと眺めていると癒される……。ってこといってたら「少女趣味やな」と男前な同居人にからかわれた。ええやんか、おっさんがかわいいの好きでも。
▼グレッグ・ベア『ファウンデーションと混沌(上)』『ファウンデーションと混沌(下)』(ハヤカワ文庫)読了。「新・銀河帝国興亡史」第二部でございます。寝かせて置いたかいがありました。第一部で消化不良だった模造人格の意義がようやく見えてきた感じ。ロボット同士の反目やロボット三原則を持たないロボットの登場だとか賑やかで楽しいなあ。第三部はすでに文庫になっているみたいだからさっそく買ってきて適度に寝かせておこう。
▼野矢茂樹『無限論の教室』(講談社現代新書)読了…?。研究室での会話を使って無限論をわかりやすいように、誤解のないように書こうしているらしいのよねえ。でも読んでいてちっとも話が頭に入ってこないなあ。僕は証明よりも、どうして証明にいたったかという学者の心理状態や態度に興味がある人間なのでねえ。無限にもいろんな立場や考え方があることがわかったのは面白かったけれど。


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