持ち駒を隠す


 小学生時代、将棋を覚えたての頃なんかは、負けるのが癪ですから、どうしても意地になることがあったりして。取った駒を握り締めて指していたような記憶があります。「おい、その手の中見せろよ」「嫌だよ」なんてこと言い合いながら教室でワイワイやってました。

 当時ルールをよくわかっていなかった私達は、駒を手で隠すことが良いことなのか悪いことなのかわからず、絶えずいいあっていました。ちょっと知恵があったら、本を読んだり、先生に聞いたりすれば良い話なんですがそこまで頭が回らなかったのでしょう。「ルールだから」といえばそれまでですが、そういわれたところで納得したかどうかはわかりませんねえ。なんたって小学生なりにプライドはあるわけですから。外部から御託宣を貰って「はいそうですか」なんていうほど素直なお子様でもなかったですし。

 で、小学生が話し合って出した結論というのは「駒を隠すのはいけない」というものでした。理由は「卑怯」だからというものです。男なら堂々と戦え、という、まあごくシンプルな根拠ですねえ。それでみんな納得して遊んでいたんだから平和だったんですなあ。

 しかし、あるとき。こいつ卑怯だ!という事態が起こりました。僕が相手の玉を追い詰めるために、逃げ道を封鎖したときのことです。「待ち駒は卑怯じゃないのか」と同級生はのたまったわけです。命からがら逃げ出しているのに罠を張るとは男らしくない、と。

 先ほどの「正々堂々」の理屈がここでも顔を出したわけです。確かに相手が弱っているのに、鞭を打つような仕業であります。「そこまでして勝ちたいかよ」という話になりまして。そういわれてみればそんな気もします。先ほどの理屈でいけば矛盾しているともいえるし。ルール上は玉を動けないようにするゲームであり、ルールに従って指している以上、文句を言われる筋合いはないんだけど、当時公式ルールなんて知らないし、将棋以外にも遊びはいくつもあったから、他の衝突のない遊びへと移ろっていったのでありました。

教訓:公式ルールを知ることが肝心。だけど日本将棋連盟のサイトにはキチンと掲載されていませんけれどね。何故かは不明ですが、おそらく普及に興味がないのだと思います。


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初版公開:2003年10月4日 最終更新:2003年10月11日
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