自分がミスして負けると頭に血が上ってしまい次の対局にも悪影響がでる、なんてことはアマチュアの方なら誰しも経験することでしょう。プロだってちょくちょくやっていますから、感情のコントロールというのは難しいことです。冷静な判断ができないまま着手してしまう、読みの深さを欠く、複数の視点から指し手を吟味できない、など振り返ってみれば、なーんだそんことか、と思ってしまうことばかり。自分の状態を客観視できないということがキモです。
まあプロでしたら客観視できない、なんてことはないでしょうが、それでも指し手の若干の狂いなんていうのはわからないものです。将棋世界2003年8月号の佐藤棋聖の自戦記にあるように、知らないうちに頭が固くなって認識能力が落ちていたり、欠点に気づかなかったりするのでしょう。それを補うためにのチェスやゴルフ、マラソン等々のようなトレーナーやティーチングプロの需要はあるんじゃないでしょうか。実質的には三段リーグにいるような有望な若手との交流を頻繁に行っているプロは、そういった効果も狙っているのでしょう。羽生四冠は絶好調であるタイトル挑戦者と戦って調整するといいますから、スケールが違いますが。
以前もずさんとのメールでのやりとりで話題になったことの一つに、引退棋士の生計手段にコーチという仕事で食べていけないか、というものがありました。今後プロの淘汰が進んでいくとすると、将棋しか能のない人がたくさん余りますから、その余剰能力を上手くいかせないかということですね。まあ引退した棋士が現役プロ相手にどうやってコーチするんだという話はありますが、そのあたりは今後の課題になるでしょう。将棋の裾野を広げる意味で、多様に稼げるような環境があるというのは将棋界発展の鍵になるとは思います。