「早逃げは八手得」の理由


 将棋の格言の一つに「玉の早逃げ八手の得」というものがあります。実際かっちり八手得かどうかは厳密にはいえないのでしょうが、効果的な一着になることが多いので、この程度の誇張表現に咎を立てるものではありませんね。

 これ、どうして王様を一マス動かしただけで八手(ぐらい)得をしてしまうのでしょうか。例えば、自玉から一マス空けて相手の金が一枚あるとします。で、王様を一つ引く。すると金とは二マス開く。間を詰めるために金を一つ進める。攻めと受けでは一手ずつかかります。それでは相手の金が二枚あるとすると。王様を一つ引く。すると金とはニマス開く。間を詰めるには、金を一つ進め、さらにもう一つ金を進める必要があります。二枚とも近づけるためには攻める側は二手必要ですので、その隙に王様を逃がすこともできますし、攻撃に転じることもできます。攻め駒が増えるほど、早逃げの効果が現れます。つまり、玉を逃がすことで攻め駒の利きの焦点をずらすと、再度焦点を合わせるには駒の数だけ手をかけないといけないわけですな。ここがポイント。さらにいうと、縦より横、横より後ろにほど、駒というのは利きが減りますので、早逃げは上部や横に逃げると効果絶大だといえます。

 二マス空くと、リーチの長い駒を打たれた場合に合い駒することもできます。ここもチェックポイントっす。角の背後から追ってくるような手は脅威ですが、合い駒できれば少しは持つというものです。 それに攻め駒に近いと攻め駒同士連絡しながら王手されてしまいます。これは攻め駒が安定してしまいますので、受ける側は損です。避けるべきでしょう。

 お気づきのように、この早逃げは盤上の駒に対する処方で、持ち駒をたくさん持っている相手には通用しません。駒の打ち込みは距離を越えてやってきますから。駒を打ち込まれないような陣立てになっていれば十分着手の候補になる手段といえるでしょう。この手筋の出番は相当多いので、常に頭に入れておくと初段は目の前です、たぶん。


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初版公開:2003年3月15日 最終更新:2003年3月22日
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