つまりだ、俺達傭兵家業ってのは、そう簡単に自決しない訳よ。追い詰められたからって恥を忍んで相手側に下る、ってな古くせぇ考えは毛頭ねぇ。雇い主が代わるだけ、ってなもんよ。そもそも俺が相手に下るのだって煎じ詰めれば雇い主の指示ミスだからな。俺にはこれっぽっちも落ち度はねえし。おうよ、全力で俺は戦っているぜ。雇われてんだからそりゃ当然の義務だわな。
昨日の味方は今日の敵、今日の敵は明日の味方。まあ俺みたいに辺境を主に担当する傭兵は、一回の戦闘ではあんまり雇い主は変えねえほうだけど、ほら、俺の前に陣取っている歩兵部隊なんてやつらは最前線にいるからよぉ、年がら年中入れ替わってるよ。尻軽もいいところだね。それと左前方にいる、立派な戦車にまたがった派手な奴いるだろ、あいつも相手の同格な奴と割と入れ替わること多いね。戦場を走り回れるような能力の高い奴ってのはどこでも人気があるものさ。敵陣に切り込むととたんに表情も変えやがるし能力も上がるし。俺か? 俺も敵陣に入ったらテンションあがるから、動きが少し変わるのさ。そのほうが雇い主にも評判がいいからな。
雇い主の作戦によって俺の起用のされ方も様々でさ。さっきいった戦車の奴が左辺に移動して、その場所に雇い主が陣を張ることがある。俺はいうなればガードマンや用心棒といった立場ってことになるか。こんときはただ前方だけ睨んでいればいいことが多いから楽だな。動くことなんてめったにないから、のんびりしたもんさ。時折俺の後ろに隠れる場合もあることもあるが、まあそれぐらいだ。
それ以外にいうと、戦車や俺の左手にいる騎馬、もう一つとなりの銀衣装に身を包んだ派手な奴と一緒になって真正面の敵の城へ殴りこみにいくことがある。このときは興奮するね。遠くをうかがえば相手も同じように攻め込んできているんだぜ。こんときはもう大騒ぎさ。暴れまわったモンが勝利の美酒に酔えるってわけよ。なに、勝てなかったらどうするって? 好き放題したあげくトンズラさ。それをヤリ逃げってんだよ。