第15期竜王戦の挑戦者は3番勝負で中田宏樹七段を下した阿部七段に決定した。3番とも8五飛戦法というなんとも意地っぱりな決戦だったわけだが、阿部の執念が実った形だ。阿部対中田は第12回全日本プロトーナメント(朝日オープンの前身)の決勝でもぶつかっており、このときもフルセットの結果阿部が優勝をもぎ取っている。年齢も近いしライバルといっても差し支えなかろう。もっとも阿部にとってのライバルは本来羽生三冠だったのであるが。
デビュー当初、羽生が東の期待の星だったとすれば、西は阿部だったことがあった。で、東西新人三番勝負が企画されたのである(ここらへんうろ覚え)。結果羽生が勝ち越すのであるが、その勝負を見ていた芹沢九段は「才能は阿部の方が上」とのたまったりしている。もっとも芹沢の予言は彼の美学実現の願望であることが多いため、なんともいえないんですけれどね。しかし三番勝負が行われただけでも阿部に対する棋界の期待の大きさがわかるというもの。
しかし、華やかな活躍で頂点をひた走る羽生に対する阿部の成績はお世辞にもいいとはいえない。いや、生涯成績は悪くないし、順位戦もB1にいるしそこら辺の棋士に比べれば活躍しているほうだと思う。だから羽生と比べる方がいけないのかもしれないね。
阿部の特長は将棋自体より、辛口なコメントや感想戦での強気の発言、そして作務衣姿での対局である(いや、将棋にも特徴があると思うんですが僕にはちょっとわかりません)。竜王戦での対局着はやはり作務衣なのだろうか。自分らのペースを貫き、作務衣で対局できればいい勝負になるかもしれないけれど、日和って和服なんぞを着たらストレートで敗れ去るだろうとここで予言しておきます。
追記
二つの千日手を含むフルセット七番勝負が終了し、羽生が竜王位を防衛しました。第一局、二局と阿部が連敗した時点では「やはり作務衣を着ないからだ」と一人納得していましたが、その後怒涛の三連勝。奪取まであと一息、というところまで羽生を追い込みました。しかし第六局、七局と後手番ながら矢倉を受けてたつという羽生の勝負術にハマリ、夢潰えることになってしまいました。惜しかったねえ。
というわけで、本戯言の四連敗という予想は見事外れてしまいました。正直、スマンかった。(2003/1/15)