定跡書のあり方


 将棋の本は好きだ。定跡書なんて最高に楽しい。勝つためのエッセンスが詰まっているのである。身につければ勝率アップが約束される(はず)。将棋を勉強するにはいい教材の一つだ。

 最近ではより即戦力となるような工夫がされている本が出てきていてうれしい。特に河出書房新社のシリーズものがマイブームである。藤井竜王の「四間飛車を指しこなす本」は、一問一答形式になっていて定跡学習を効率よく行える仕組になっている。佐藤九段「戦いの絶対感覚」、森内八段「戦いの絶対感覚」この二冊は定跡ではなく手の組み立て方、考え方を教えてくれる。また定跡を一望できる深浦六段の「これが最前線だ!」は将棋界の流行を知りたいと願うアマチュアには刺激的であったと思う。

 とはいえ今の定跡書じゃ物足りないところもある。以下にいくつか追加して欲しいことをあげてみよう。

  1. この本は以前の定跡に比べてどこがよい、ということを明示してほしい。昔だれそれが書いた本のどこのページの変化より良いとか悪いとか、定跡の前後関係を明確にする。
  2. その定跡がプロの将棋界でどのような扱いを受けているのか、誰に好まれているのか、勝率、変遷などを詳細に書く。
  3. 参考にした書籍、棋譜をすべて挙げる。
  4. 電子ファイル化する。

 1. は昔に戻らないための防御手段というか。定跡の流れ、位置づけのために必要なことだろう。位置づけが明確でないと同じような本を書いてしまう危険がある。 2. は定跡の流れ、位置づけの中心となる事柄なので必須だ。そういうこと書いてある本はほとんどない。地味で大変な作業だから誰も手を染めようとしない気持ちはわかるけどね。しかしそれだといつまでたっても将棋戦法大全(※1)が完成しないんじゃないかなあ。っていうか組織だった定跡の管理って誰もやっていないのかな。本来なら定跡書だって年一回はバージョンアップする必要があるんじゃないか。

 3. は参考資料をもっと充実させて欲しいということです。紙面との折り合いもあるだろうができる限り多く載せてよ。 4. は絶版になった本の再利用や検索の簡便さを考えるとどーしてやんないんだろうかと勘ぐってしまう。データベース化しておけばもっと便利になるだろうし。棋譜だって自由にダウンロードさせて欲しいよなぁ。ってこれは定跡書とは別な話ですけど。


※1 将棋戦法大全を完成させるのはいったいどこの誰なのか。僕の知っているうちで可能性がある三つの団体を挙げておこう(真に受けちゃだめよ)。

  1. 日本将棋連盟:さすがに一番可能性が高い……はず。
  2. Nifty のデータベース:詳しくは知らないんですけど戦法集があるとか。
  3. (社)日本将棋連盟新潟支部:定跡二十万手という現実的な成果を上げているため。

 一番ありえるのは……三番かな(笑)。


追記

 ささやかながら、優良棋書を後世に伝えるために、将棋戦法大辞典というプロジェクトを始めました。どなたでも参加できますので、皆様のお力をお貸し下さいませ。(2002/11/03)


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初版公開:2000年11月25日 最終更新:2002年11月3日
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