瀬川氏がプロになりたいという件について


 瀬川氏がプロになりたいという件ついて尻馬に乗って私も書いてみることにす る。

 ネット界隈でも言及されていて、概ね「プロに成ったらええやん」「応援する」 という方が多いのだけれど、ここでひねくれもののの私はまず プロにはならないほうがよい、と主張してみたい。

 だって。

 将棋界でトップに立てるのは一握りなわけだけれど、今から参加してその一角を 占めることがで きるか? 連盟からすればそういう力量がない人を入れたところで分配するパイ は少なくなるだけでメリットがないから消極的になるだろうし、ファンだって、 参加当初は応援するかも知れないけれど時間が経つに従い、普通の棋士には目も くれなくなるわけで。本人がいうに、C1 で勝ち越せるかどうか、なんて人いれたってねえ。

 本人だけが将棋を職業にできて幸せ、というのは無茶だ。瀬川氏が プロになることで、連盟、スポンサー(新聞社)、ファン、そして本人という関 係者全員にとって 利益がないと実現は難しい。

 順位戦に参加できたとしても、負け続けたら引退しないといけないし、そうなる と再就職はかなり厳しい。将棋関連の仕事 枠も少ない状況です。つーか聞いたことない。レッスンプロなんていうのはいま だ太鼓持ちだし社 会的認知度も皆無なわけで。金を出してくれる企業もずいぶん少なくなったし な。というか挫折した際のリスクがでかすぎるってば。夢だけでメシは食えない ぞ、といいたい。

 逆にいうと、連盟がだな、将棋関連事業の立ち上げ、普及業務事業の構築をサボ ってきたから結果というかね。対局中心主義なために、その他で金が稼げる分野 の開拓 がずいぶんおろそかになっておるわけね。そこが問題だと。金の配分が対局中心 じゃなくなれば将棋が強くなくても将棋に関連した仕事で生きていくことができ る。たまにトーナメントに出るとかいう生活もできるでしょう。そうすりゃもっ と将棋を糧に生きていく人口も増えるはずだが、現状は普及を志す一般市民に指 導員と称して許可証を発行し金を巻き上げる狼藉を働く始末ですから。逆に金を 払ってやれよ、 といいたい。裾野を広げてくれているのは誰なんですか。

 プロになる道を増やすということはプロ棋士のあり方に大きな変更を加えるわけ なので、現在の仕組みで上前を撥ねたり小さな利権をむさぼってた連中から激し い反発をすると思うし。

 もともと将棋連盟は、棋士がどうやって食べていくかをテーマに作られた組織で すので、棋士にとってうまみのない話には乗りっこありませんて。フリークラス の創設だってそうでしょうし。あれは三段リーグから零れ落ちた人を救うためじ ゃなくて、棋力が落ちた中年棋士救済システムですからねえ。

 義憤に駆られた第一人者が犠牲になって改革をしたことが一度だけ(関根13世名 人ね)ありましたが、現在の棋界に、棋力(なぜかプロ将棋の世界は棋力がない と発言できないようです)、人格、現状認識力、経営センスを兼ね備えたスケー ルのでかい人間はいませんし、熱気も感じられませんから。唯一期待できそうな のは、渡辺竜王ぐらいですか。しかし彼が仕切るようになるとしても当分先の話 ですしね。

 将棋界を取り巻く環境は以上なものですから、今プロになりたいと叫んだところ で、棋界で 起こった一椿事で片付けられる可能性が高い。冗談でとっている棋士も多いでし ょうし。 それではあまりに可哀相だと思うんです。だからこそ、アマのままでいたほうが いいのではない かと、そう思うわけです。人身御供にならなくてもいいんじゃないかと。プロに ならなくてよかった、と思える日がくるかもしれませんし。それでも辺鄙な世界 に未練がある、というのなら止めはしませんが。

 あとプロにどうしてもなりたいなら、現在の頼りにならない日本将棋連盟に入る んじゃなくて、新しい連盟でもつくってプロを名乗る手もある。そっちのほうが よほど建設的じゃないかと。どうかしら。連盟の態度にいらだっている棋士を引 き連れて分裂したりとか面白いと思うね。いっそのこと家元とか名乗ってみると か。野球でいうところの独立リーグみたいなのね。どうすっか。

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 あと三段リーグは年齢制限廃止を検討して頂きたい。過去、高齢になっても昇級 を果たした諸先輩棋士がいたことを鑑みれば、大器晩成を否定することはできな いと思うのです。本人が納得するまで指させてやって欲しいなと。年齢制限を向 かえた三段がリーグ途中で昇級の目がなくなった、けれど消化試合を指さなけれ ばならない心境を思うとやりきれないのだ。


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初版公開:2005年2月10日 最終更新:2005年3月5日
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