将棋世界7月号の名人戦観戦記について

double crown

 とりあえず、2001年7月号「将棋世界」を購入して(立ち読みも可)一通り読んでみて下さい。なにかひっかかるところがありましたか。それとも普通に通読できましたか。おそらく将棋ファンの8割は何にも疑問を持たずに読み終えたことでしょう。そして残りの2割のファンは「あれ、なにかおかしいぞ」とか「失礼な奴だ」と思ったんじゃないですかね。そう、名人戦第3局の観戦記のことです。

 「丸山名人は先手番なのに自ら千日手を選んだ。勝負至上主義に徹する名人は本当の意味で名人なのか?」という内容なんだけど、この作家は妄想だと前置きしつつ、勝負至上主義をとる丸山名人を「社会的引きこもり」「明かすほどの自分がない」などと書き散らしているんだなこれが。僕が最初に読んだときは、なーんにも考えずに、「あははは」と笑って読んでいたんだけどね。ひっかかると思われる箇所は二点。(1)名人位にある者を批判したということ。そして(2)名人丸山の人格まで非難したということだろうな。

 この作家は丸山名人を名人として認めていないのだろうね。そんでもって筆が滑って人格まで言及しちゃったと。それが真相だろうな。で、8割がなーんにもおかしいと思わなかったのは、その作家の気持ちが将棋ファンのそれと同じだということなのだ。それはね、名人に実力と品格を求めているということなんですよ。権威ともいうけれどもね。ファンの心理は大体こんな感じ。

  1. ファンは歴史的に名人に品格(将棋と人間性)を求める傾向がある。
  2. でも丸山名人にはその傾向がない(先手で千日手、と金づくり、攻撃を待つ)。
  3. そういう名人の将棋は、本来の名人ではない。
  4. そういう丸山が名人なのはおかしい。

 という意識の流れがあるんだよきっと。流れがあるからって、人格を非難してよいかと問われればそりゃよくない。よくないけど読んでいる方はおもしろいわな。いわゆる有名税なわけで、しょうがない部分だな。将棋指しは芸人なんだから。というわけで、連盟に抗議のメールを出す、さらには、田丸編集長の責任問題だとわめくのは勝手だが、ま、だからってどうなるものでもない。メール出して満足していればいいじゃないかしら。それよりこの観戦記がどうして「将棋世界」に載ったのか、そっちの方が興味がある。日本将棋連盟のお膝元で現名人を非難する文章が載ったのですよ。こりゃいったいどういうことなんでしょうか。

 おそらくその原因は、順位戦制度と名人位に対する棋士の意識変化だと思います。その話は待て、次号(笑)。

※ネットでも観戦記の感想が書かれているページがありますので、読んでみて下さい。


後記:

01/11/23

 てな訳で、筆禍騒動にはなりませんでしたね。連盟も丸山名人に権威なし、と認めたわけだ。最近は竜王戦の方が権威があるように思えるよ。


TOP将棋戯言前の戯言次の戯言

初版公開:2001年06月16日 最終更新日:2001年11月23日
(C) double crown 2000,2001
double crown(E-mail:doublecrown.under@gmail.com)
http://doublecrown.under.jp/
http://doublecrown.under.jp/shogi/0035.html