将棋戦法大辞典

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 古本屋さんをまわるのが好きな僕なんですが、先日、吉祥寺で探索していると「将棋戦法大辞典」なる辞典を発見しました。定価14,000円也。巻末に古本価格5,000円と値段を記した付箋が張ってある。古本で5,000円か。普段、100円均一で古本ライフを楽しんでいるので5,000円といえば大金である。うーん、購入するのに踏ん切りがつかない。パラパラめくってみる。ページ総数1165。執筆陣が加藤治朗、木村義徳、真部一男か。初版は1985年12月1日とある。もう15〜16年も前の本であるな。しかし辞典である。内容は古びようが時代を反映していて価値があるに違いない。と、まあ、いろいろうだうだ考えたあげく清水の舞台から飛び降りたつもりでレジに持っていったのでした。

 以前の戯言で、「将棋戦法大全を完成させるのはいったいどこの誰なのか」と書いたことがあるのだけれどすでに(狭い範囲ではあるが)完成していたのであった。これは力作ですよ、ほんとに。

 戦法を大まかに「居飛車編」「振飛車編」「矢倉編」と3つに分かれておりそのなかでも「居飛車編」は600ページ、およそ半分を使い解説してあります。これは対振り飛車も解説してあるのでまあ、そんなところでしょう。残りのページの分配は「振飛車編」と「矢倉編」で半々で分け合っています。まだとっかかりしか読んでいないのでなんともいえませんが、最初の「相懸かり戦法」は今はやり(ですよね?)中座飛車の参考になりそうな変化が詳しく載っていて興味深いです。なるほど、こうやって旧相懸かり戦法は絶滅したのだなあ、ということはよくわかります。いや、丁寧な仕事していますよ。そのあと実戦譜でしっかりフォローしてありますしね。この調子ですべての戦形を解説するって、大変だよなあ。

 まえがきで加藤治朗が「本書は将棋戦法辞典のタタキ台のようなものである。本書が五年後十年後と改訂版が新しく出版されるに従い、逐次その時、その時代にマッチした、完璧に近い辞典ができあがるだろう。」と語っているけれど今、そんなのありますかね。残念ながら誰も継ぎたがらなかったところを見ると、楽しい仕事ではなかった、というところでしょうか。実際大変ですからしょうがないかもしれません。

 しかし、僕は違う形で戦法大全は存在できると思うのです。一冊にまとめるのは無理でしょうから、ある変化はこの本、他の変化はこの本を参照しなさい、という参考書一覧のような本をつくることができるんではないか。すでに解決している問題をいちいち辞典でまとめる必要はない。将棋本のリンク集を作りなさいということです。これならぐうたらな将棋連盟もつくることができるでしょう。せっかくの資産、大事にして下さい。


後記:

01/04/01

 こういう仕事って、棋戦で活躍していない棋士や退役棋士なんかがやればいいんじゃないですかね。ビタ一文にもならないこと(もないと思うけど)なんて、やりたがらないでしょうけれども。

 それにつけても、当時も今もバリバリの現役である羽生五冠が「羽生の頭脳」で定跡を総括してみせたというのは快挙だったんだなあ、としみじみ思います。他の棋士はいったい何をしているんだろう? どうもこの将棋界というのは、強い人間がめちゃくちゃ頑張らされているというおかしな風習があるようで。


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初版公開:2001年03月10日 最終更新2001年04月01日
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