将棋を楽しむために


将棋を楽しむために

 将棋ねぇ。うん、趣味を増やすことはいいことだと思う。こんな不景気な世の中だ。駒と盤ぐらいしか金はかからない、頭の体操になる、暇はつぶれる、いいことづくめだね。それに楽しい。……楽しい? うーん、それは一概に言えないんだよね。どちらかというと、つらいことのほーが多いかもしんない。実はね、将棋を楽しむためには長く厳しい道程があるんだよ。ここでひとつ、そこらへんを説明してみようじゃないの。

相手について(相手がいる?/相手の棋力/相手の人格)

 相手がいるか。好敵手はいるか。すべてはここから始まる。相手がいないとそもそも将棋自体できないよね(※1)。君の周りに将棋指せる人いる? いるなら第一関門はクリア。これが結構難問なんだな。近頃将棋を指せる人が減ったみたいなんだよね。「オレ将棋趣味!」って聞く機会もそうないし。地味だし、暗い感じがするし、年寄りの遊びみたいだし、モテそうもない。今の派手な時代には向いていないゲームなのかもしれないな。将棋盤や駒なんて昔(1985年ぐらいかな)だったらどこの家にもあったんだけど、今常備しているところは少ないしね。気のせいか? そういやこの間いった玩具屋では駒しか置いていなかったな。で、スーパーにいったらあったりした。いったいどうなってんだ?

 まあいいや。で、相手がいたとする。でも六枚落ちで歯がたたなかったり、反対にどんなに力を抜いても勝つような相手だと対局しててもおもしろくないよね。つまり自分と同じぐらいかその前後、できれば少し強いぐらいがちょうどいい。だけどそんな人と出会える可能性は極度に低いから、自分から対戦相手を探すぐらいはしないといけないかもね。将棋道場へ行くとか、ネット将棋に参加すれば自分に合う(戦ってておもしろい)人が見つかると思うよ。

 あとこれは結構見過ごされているんだけど、将棋が好きな人の中にもいい人悪い人がいるんだな。いい人っていうのは勝負と現実をきちんと分けて振舞える人のことをいう。将棋ってね、負けると異常にくやしいの。で、負けた後くやしいさを相手にぶつける人がいるわけ。見苦しい人も結構いるの。そういう人がいる割合はどうなんだろ、けっこういる。で、そんな人ばっかりとやっていると全然面白くないからうまく逃げるようにしてね。会社の上司だったり、親友だったりするとなかなか逃げらんないかもしれないけれど(笑)。

自分について(自分の棋力/面白さの理解)

 うん、他人は他人。相手に文句ばっかりもいってられない。自分はどうなんだって話だわな。まず自分がどれぐらいの棋力があるのかは把握しておく必要がある。アマチュア初段ぐらいあればとりあえずどこに出ても対応できると思う。でもなぁ、アマチュア初段にたどり着くまでが結構大変なんだよなぁ。そこまでいかないと将棋の面白さってわかんないし。

 将棋の面白さっていろいろあってさ。勝つ、っていうのが最大の目的だけど、勝つにもいろんな要素があるわけ。手の読み合いで勝つ、美しい攻めで勝つ、しぶい受けの一手を放つ、起死回生の一手を指したときの高揚感等など。それこそ指す人の数だけ将棋を指す楽しみが見出せるわけ。そこが面白いわけよ。でも局面を判断して着手するにはある程度「手」がを読めないとできない。この「手」が読めるってレベルが初段だと思うのだけれど、それまでに成長するのが難しい。成長過程で負けが込んで離れてしまう人が多いんじゃないかと思う。とりあえず形勢判断できて、その結果から指し手の方針を立てることができれば合格だね。っていうかそこまでできたら有段者の素質があると思う。初心者にそこまで求めるのは無理だからまずは以下にあげる三つの要素を押さえておいてほしい。

  1. 手番:自分が手番をにぎっているかどうか。
  2. 駒数:どれぐらい自分の駒があるか。相手の駒があるか。
  3. 効率:急所に駒が利いているか(例:敵玉の近くに自分の駒がある、飛車が敵陣に成っている、と金がある等)

 これらを把握していれば自分は現在有利か不利かぐらいはわかると思う。常に意識して指せるようになれば実力はつくはず。

将棋の性質について(面白さの理解に時間がかかる/負けると悔しい)

 面白さの理解についてはすでに書いた。「手」が読める(見える)ようになって将棋の醍醐味がわかる。「手」が読めるようになるのにはどれぐらいかかるのだろうか。これは個人差がある。若ければ若いほど早いみたい。あと反骨精神がある人。負けても立ち上がれる人。そして続けることができる人。これだけの心構えがあれば「手」なんてすぐに読めることができる。最速で一ヶ月ぐらいかしらん。

 ただねぇ、将棋って負けるとメッチャ頭にくんのよね。最初は弱いから負けが込む。ここで踏ん張れるか。そこで決まる。全然手が読めないときは少しは慰めになるの。負けてもしょうがない、だってまだよくわかんないから。で、ちょっとわかってくると自分が歯が立たないってことが理解できるようになる。ここ。ここでへばる。

 囲碁で負けてもけんかしない二人が将棋をしたところ大喧嘩になった、って昔の人はよく言いました。囲碁と将棋。ゲーム性の違いはなにかと問われれば「逆転要素の差」だといえそう。囲碁は一手悪手を打っても勝敗をひっくり返すケースはまぁ少ないほうだ(ごめん、詳しく知らないんだ)。けれど将棋は一手で鮮やかに勝敗が逆転してしまうのね。見事なまでに。いままで積み上げてきたものなんていっさい評価されない。この落差の大きさ。これが将棋の激しさであり醍醐味でもある。逆転負けってホント辛いんだよなあ。

まとめ

 まとめるとこうなる。

  1. 同じ力の好敵手(ライバル)を見つける。
  2. アマチュア初段になるまで我慢して将棋の勉強をする。
  3. 打たれ強くなる。

 これらを全部クリアをして始めて将棋を楽しむ事ができるんだ。どう、やる気になったかい? まるで修行僧のようだね(笑)。まあ何事にも相性ってもんがある。向いていないと思ったら、さっさと縁を切るのも手だよ。将棋なんて、たくさんあるゲームのひとつなんだから。


※1 と思っていたけど、最近はコンピューターが立派に相手をしてくれますね。最強レベルだと歯が立たないぐらいの実力がある(涙)。現代の小学生はテレビゲームで初めて将棋に触れる機会が多いのだろうな。昔に比べて将棋へのアクセス手段が減ったとばかり思っていたけれど、そうとも言い切れないみたい。(2001/02/08)


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初版公開:2000年10月14日 最終更新:2002年10月30日
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