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定跡書を評価するデータベース的仕組み

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 居飛車党に鞍替えしようとしてこの間「佐藤康光の居飛車の手筋 1 四間飛車粉砕編 (1)」を購入しました。まえがきに、

 四間飛車も「藤井システム」が出て来た頃からかなり細分化され、定跡も少しずつではあるが確立されてきている。が、本書ではまず、基本を学びたい方を対象に居飛車の代表的なまた、個性的な作戦も盛り込んだ。

 とあり、基本を押さえたい私はこりゃちょうどいいな、と思ったんですわ。初心者の方向け、ということもあって、中盤から一手ずつ出題され、それを解きながら形を覚えていくんですけれど、ある変化を見て考え込んでしまった。これ、居飛車側が悪いのではないの?っていう局面がちょくちょくあったりなんかして、当方の棋力を考えると定跡書のほうが合っているんでしょうが何しろそのあとの変化が書かれていない。

 それに四間飛車本(おそらく藤井九段のものか東大将棋だった)にその続きが書いてあったような気がするんだけれど、どれに当たればいいかわからない。この間将棋タウンさんに段ボール二箱分買い取ってもらったんですがその中にあったかもしれない。まあとにかく、気になった局面の評価が結局どうだったのかはすぐにわからないわけです。

 本書は割と新しめの定跡書ですから、最新の結果が盛り込まれているのではないかと期待するのですが実際どうかは大いに疑問なのです。もしかすると、昔の棋書より後退していたりしないだろうかとか。そういう情報を客観的に比較する手段は今のところ、個人が蔵書を検索して棋譜を付き合わせるしか方法がないわけでして、もう、激しく無駄な労力なのではないかと思うんです。

 そこで提案なのですけれど、定跡書を出版する場合は、そこに出てくる手順をすべて、データベースに登録していただきたい。それを蓄積していくことで、ある定跡書の立ち位置がくっきりと浮かび上がってくると思うのですよ。

 今回の定跡書は以前の定跡書に比べて、ある変化をより詳細に研究してある、とか結果が覆ったという情報がすぐにわかります。過去のどの定跡書より少しずつでも新しい変化が付け加わっている、ということがわかれば、その時点では優れた定跡書である、ということがわかりますし、昔の定跡書の範囲内のことしか書かれていない、ということもわかりますし、あるいは、複数の定跡書のエッセンスを上手くまとめている定跡書である、なんてこともわかるでしょう。

 このデータベースのメリットは他にもあって、それは常に最新の変化を一元的に管理できるから、昔の分かり切った変化を調べ直す必要がなく、未知の分野にのみパワーを注げばいいということがわかります。つまり、定跡解析のスピードが上がります。将棋の神髄を究める、極めたいというある種の夢も少しは近づくかもしれません(ただし個人的な棋力を付けるのは、当たり前の手順でも自分で考えることは重要です。常識が永遠に続いた例はありませんので)

 こういう仕組みを作ってしまうと、焼き直しした定跡書を作ってきた出版社や、やっつけでやっているようなライターが生活できなくなるかもしれませんので、すぐには実現しないでしょうけれどねえ。

 以前書いたように、四間飛車本と、四間飛車破りの本が並んでいるとして、どちらのどの箇所が優れているのかが、すぐにわかるようになってくれると利用者としては無駄な金を払わずにすむのですが。


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初版公開:2007年8月2日 最終更新:2007年8月2日
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