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第15回北九州ハイビジョン将棋フェスティバルの感想

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 2006年3月26日(日)北九州国際会議場で開催されました第15回北九州ハイビジョン将棋フェスティバルにいってきましたので、その感想を書こうかなと思います。

 指導対局を申し込んでいなかったため、11時に始まるお好み将棋対局に間に合えばいいかと思い家を8時に出る。片道2時間、マージンを見て3時間前の出発。福岡県の西の端から東の端への移動は時間が掛かるのであった。まあ、小旅行だと思えば苦痛でもなし。のんびりと列車に揺られ会場へと向かう。

 会場は海の側にある北九州国際会議場。凝った作りで、造形的に格好良さげなのはいいが、通路が妙に狭かったりして利用しにくいこと。まあいいけど。とか思いつつ会場についたのが10時30分。目の前には指導対局を行っている、棋士の方々がおりました。メンツを見て、あー指導対局申し込んでおけばよかったと超後悔。佐藤棋聖、山崎六段、橋本五段という男性陣に矢内女流名人、千葉女流王将という豪華さ。あー、勿体なかった! その他に大阪弁でひょうひょうとした面白(ちょっと毒舌気味)トークの浦野七段、ハキハキと指導してた頼もしき村田女流に、およそ勝負師らしくない(けれど強い!)平成生まれの室田女流という布陣でございますよ。ああんもう。

 てな感じで身悶えながら、お目当ての橋本崇載五段対千葉涼子女流王将戦を観戦。持ち時間10分で切れたら30秒という厳しい条件なので、致命的なポカが出てあっさり終了してしまわないか、という別の意味でドキドキしながら見てました。

 振り駒は事前に振ってあり、先手が千葉女流。壇上に登場し、席に着くやいなや進行のおばはんアナウンサー(?)が「それでは始めて下さい」と宣言。すぐさま解説の浦野七段が「駒を並べないと始められないんですけれどね」と返す。対局者が駒を並べている時間中に聞き手の矢内女流が「会場に来ている皆さんは、全員千葉女流を応援していると思います」との発言に、会場拍手。役者の橋本は会場に顔向け、「おいおいマジかよ?!」のゼスチャー。そのアクションに俺や、わかっている人達が拍手を送る。すると橋本、両手のひらを上下に振って「もっと拍手コール」のゼスチャー。それに答える観客。ってな応酬をして盛り上がる。あははは。これは楽しかったね。

 そうこうするうちに対局スタート。千葉女流の初手▲2六歩に橋本は△5二飛といかにも人を喰った指し手で応酬。以下、中飛車対急戦という戦型となりました。序盤は先手の千葉が金銀3枚を六段め中央に並べて位を奪還し指せていたと思います。橋本の決め手を与えないまったりとした手に業を煮やした千葉が、中央の厚みを放棄して銀をぶつけたのがおそらくまずく、その後玉頭からガリガリやりたい放題攻められて万事休す。詰め上げた手順は、詰め将棋の大家、浦野を意識して綺麗にまとめてましたけれど、どうやらもっと早い詰みがあったようです。

後手:橋本五段
後手の持駒:歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v飛 ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v金 ・ ・v角v金 ・ ・|二
| ・v銀 ・v歩 ・v歩 ・v歩 ・|三
| ・ ・v歩v銀 ・ ・v歩 ・v歩|四
|v歩v歩 ・ 銀 歩 歩 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 金 銀 ・ 飛 歩|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ 桂 ・ ・|七
| ・ 角 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:千葉女流王将
先手の持駒:歩 
【手数=61  ▲6五銀  まで】

後手番

 時間がないとはいえ感想戦が盛り上がってきたときに、司会のおばはんが遮って割って入ってきたのには閉口したな。ワイワイいいあうあの時間こそが一番盛り上がってたところだったのに! 面白トークができる浦野、橋本、千葉がいたのによ! まあ千葉の「あの銀は眼が腐りますね」という発言が生で聞けたからよかったけれども。

 次のイベント「トークショー」が14時から。12時に終わったから2時間ある。この空き時間、皆さんならどう過ごす? 正直こういう時間を過ごすのに僕はまったく苦にしない、というか逆にあったほうが楽しいぐらいの人間なのですね。でも他のお客さんはどうだったんだろう。その2時間ていうのは指導対局の時間なんですよ。なので指導対局のある人はギリギリまで楽しんで、そのままトークショーに参加できるんですが、もちろん指導を受けることができた人は一握りなわけで、暇な人達が2時間放置されていたというか。なんだろう、このぐだぐだ感。あぶれた人が将棋を楽しめるような工夫はやっておいてしかるべきではなかっただろうか。例えば、お客さん同士で対局ができるように、将棋盤、駒を揃えておくとか。少しはあったようだが、明らかに足りないですよ。また、できれば福岡に関連するプロやアマの将棋史をまとめて展示するとかありでしょう。アマ大会ってどんなのがあるか、とか将棋道場の紹介とかNSNの紹介(笑)とかさ。激しくいろいろできるぞ。

 僕はその2時間でメシを喰った後、小倉駅周辺を散策。知らない街をフラフラするの大好きなので楽しかった。商店街の寂れ方とか、いかにもって感じでした。頑張れ北九州。

 トークショーは二部構成になっていて、最初は、千葉女流王将が司会で佐藤棋聖と山崎六段の話しを聞く、という趣向。フリートークという非常に手抜き感いっぱいで、これは企画責任者出てこい、と激しくいらだった。お前、聞けることいっぱいあるだろうによ!

 勝手なおしゃべりに実力を発揮する千葉女流なので、ここは場慣れした佐藤棋聖がほとんどを仕切って、時折山崎が喋るんだが、こればまたいい加減で、喋れば喋るほどドツボという(笑)。A級プレーオフに進出した二人の星を9勝1敗と言ってみたり(8勝1敗)、千葉が王将位を獲った相手を間違えたり、A級プレーオフの一戦は前日飲んで寝てしまい、気づくと終わってたとかだったり、三日前の棋譜が並ばないとかだったり、大丈夫か(汗)。というか、これが本当なら(本当なのだろう)そうとう肝っ玉が太いというかなんというか、逆に凄いなと。

 王将戦で負けた数日後ということもあった、トークの頭で早速触れる千葉女流王将に流石だなあと唸る(笑)。なんでも最終局の対局場に奥様を連れてきたという話しがあって、その辺の事情を詳しく話してくれたが、まあ面白くないので端折る。

 最後にそれぞれ来期の抱負は、みたいな話しになったんだが、千葉「健康」、山崎「順位戦で秒読みになるまで頑張る」というなんともオーディエンスが感心するような話しは出なかった。佐藤棋聖も「タイトル防衛」とかいってんではどうよ? 全員タイトル全部獲る、ぐらいいえんのか(笑)。

 2部構成の後半は、小学生が棋士に質問をする、というコーナーで回答者が前述の3名に司会が矢内女流名人。この矢内さん、何というか非常に落ち着いていて話しを回すのも巧妙だし、感心したなあ。できる女、って感じだった。指導対局でも一番迫力があったもんね。いやはや、すっかりファンになった事よ。こういう人となりってのはやっぱし会ってみて初めてわかることだなあと。質問についてもまあ面白くないので略。

 そしてメインエベント、佐藤棋聖対山崎六段の一戦。これはねえ、両者の特性が非常に出て面白かったねえ。あと、この公開対局、普通とはちょっと違う体制でおこなってましたね。ステージで対局するには同じなんですが、解説陣の浦野、橋本が別室で待機し、その様子をステージ上部の3画面に分割されたスクリーンの1番左側に映し出す。対局前に配布されたイヤホンをつけると、解説が聞こえてくる。これ、対局者に解説が耳に入らないようにする工夫のようです。なんか新鮮。中央の画面にはテレビカメラからの対局者の顔や手元などが映され、右画面にはコンピュータ将棋で、盤上を再現してくれているという。まるでコンサート会場のようでしてこれはよかったんじゃないかしら。

 そうそう、対局ですが先手佐藤棋聖の居飛車模様に後手山崎は一手損角換わりっぽい出だしから序盤早々に九筋の端を位をとって先手を挑発したのち、立石流四間飛車へ。後手の作戦が無理気味で、自然な指し手で優勢に進めていた先手。香得+馬が出来て楽勝ムードが漂って、解説陣も困ったなあ、みたいな空気が流れたときに山崎が指した飛車を降ろす手が先手を困惑させる手で、その手を境に一気に逆転、力があるのを見せつけたんですね。イヤー、スゲエなあと思ったんですよ。そしたらあなた、佐藤棋聖も玉頭戦で玉に対する叩きの歩を躊躇もせず取り、橋本を唖然、観客みんなを呆然とさせました。普通なら1秒も取る手は考えないってば。感想では「形勢が悪いから仕方ない」とかいってましたけど、仕方ないからって取る手はねえYO!

 残念ながらこの対局の棋譜が微妙に思い出せないので盤面を掲載することが出来ないんです。うー。30秒将棋でこれだけギリギリの面白い将棋が指せるなんて、流石プロだなと感心したですよ。

 対局終了後は、次の一手正解者にプレゼント抽選会があって終了。しっかしこんなに魅力的な将棋指し達にあえて非常に充実した時間を過ごすことができました。次回も是非参加したいと思います。

 まだ書き足りないですが、とりあえず終わり。あと、ショップのお姉さんが大阪弁でかわいかったけど、1人でお客を捌くには大変そうだったのが可哀想だった。あー、橋本や山崎の扇子が欲しかったが売っていなかった(酷い!)ので、佐藤棋聖の扇子と、「棋士 瀬川晶司」を購入しました。

追記:2006年3月31日 思い出したことをつらつらと。

追記:2006年4月1日

 関西将棋会館ホームページに写真や棋譜が載ってます!(第15回北九州ハイビジョン将棋フェスティバル(3/31)) 有難いっ。以下の文章は上記サイトを開いて棋譜を閲覧しながらお読み下さい。クリックすると新しくウインドウが開きますので。

 千葉が自分の手を「眼が腐る」と称したのは61手目の▲6五銀。終局後橋本が「アマのみなさんはマネしちゃいけない」といったのは70手目の△6八角成。本筋は角を引いておくべきだと。本譜は先手玉を手順に右辺へ逃がすからだとか。しかし今見返しても橋本の寄せはぐだぐだだな(笑)。

 山崎が佐藤を眩惑したのが78手目の△2九飛。普通は飛車を降ろさず△2六飛と活用するところか。ところが両取りラインに飛車を降ろすことで佐藤棋聖の判断が狂う。84手目の△2八金があまりにイモ筋で見落としていたのだ。曰く「流石に打たないだろうと」。ところが以下、▲4八馬に△1九金とこっちに擦り込むのが好手で後手よしになった。30秒でこの勝負手を放つ才能に拍手。

 100手目、山崎の叩きに佐藤が驚愕の▲同玉。曰く「(形勢が)悪いと思ったんで取った」。いやいやいや。悪くても取らないです。141手目から終局まで左上の3×3の中で指し手が進むわけわかんなさも面白かったね。佐藤が頬を何度も膨らませたり、山崎がうつむいて首を振り続けたりと、苦悩する姿もええものだ。

追記:2006年4月8日

 時が経つほど記憶が鮮明になるのだどうしてだ?


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初版公開:2006年3月28日 最終更新:2006年7月9日
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