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2005年度・JT将棋日本シリーズ福岡大会の感想

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 先週の日曜日、2005年7月10日、2005年度・JT将棋日本シリーズ福岡大会へ出かけて参りました。そのときの感想とかレポートとかをちょっとメモしておきます。

 場所は福岡市中央区渡辺通にあります電気ホール。僕が以前学生時分の頃(10年前ですがな)はメルパルクホール福岡でやってましたけど、交通の便でいえばまだ電気ホールの方がマシ、ってな感じですかね。で、開場12時30分、開演13時、大して人も集まらないだろうと思い近くのコンビニで時間を潰して定刻にいってみたらじじぃ連中が列を作って待っているじゃないか。しかも当日は小降りの雨、シャツがじっとりするほど蒸した入り口付近にじいさんが100人以上もいるわけですよ。病院か、老人ホームか、食糧の配給かと思いましたね(笑)。ちょっと一般人なら決して近づけない空間でした。

 というか天気が悪くても足を運ぶ熱心な将棋ファンというのはこういう人たちなんだなと。ああ、未来が見えない(泣)。

 開場になると入り口でJTレディと呼ばれていた小綺麗なお姉さんからパンフレット、アンケート用紙3枚、週刊将棋一式を貰う。で、そのすぐ奥に解説陣である野月浩貴七段、石橋幸緒女流四段、北尾まどか女流初段が並んで「こんにちはー」と挨拶しているではないかっ! 激しく焦った(笑)。ファンサービスの一環ではじめたそうだが、これ、いいかどうかは微妙だなあ。挨拶しているということは、気軽に話ししづらい。ある種流れ作業的なやっつけ仕事っぽい印象です。もてなす、という演出をしたいのであれば、ロビーで指導対局なり、あるいは将棋盤を並べて客同士で戦って貰って、手を指摘するとか、極力将棋を通したふれあいがよかったのではないかと。つか、まあ、時間的に難しいかもしれんが。

 13時からイベントスタート。入りはパッとみ多く入っているように見えたんですが、結構ひと席空けて座っている人が多くて西日本新聞では約600人と書いてあったけれど、その半数ぐらいじゃないかな、実際は。

 開始前、どこかのお偉いさんが挨拶していたんですが、その途中「我々将棋ファンは将棋を打って、うんぬん」とのたまっておりました。将棋ファンなら打つとはいわないと思うんだがなー、と思いがっかり。だったらファンとかいうな。ちなみに使っている ATOK 、「将棋を打つ」と入力すると「将棋を指すの誤用」と指摘してくれるのね。偉い。

 対局は、小学生低学年の部決勝、高学年の部決勝が前半戦で、後半戦に郷田九段、三浦八段が出てくるスケジュールです。前半の対局はうーん、勝負は水物というか、ポカがでてしまうと切ない展開になるというか。低学年の部に登場した女児が、序盤早々銀損してしまうのね。開場もどよめきましたよ(笑)。解説の野月七段も面食らったでしょうが、「まだまだ大丈夫です」と懸命にフォローしていたのが印象的。野月七段は言葉もきちんと選んで考えながら喋っていて好印象でした。

 高学年の部の戦型は、先手意表の筋違い角(こんなの決勝にぶつけてくるとは、力勝負に自信があるのでしょう)に振り飛車で対抗する久保八段的対応。熱戦でしたが、後手が終盤でポッキリ折れたのが残念でした。「竜による王手で相手に合い駒を強要し自玉の詰めろを消す」テクニックを使えばまだ戦いは続いたと思われるだけにね。秒読みだったし、「詰めなきゃ」と思い込んでしまうのは仕方がないですがね。

 まあ思ったのは、福岡の小学生レベルでは Bonanza に敵わないだろうな、という切なさですかね。高学年の部では序盤早々、角のタダなりが実現できる局面がありましたが両者とも気づいていませんでしたけれど、 Bonanza なら一発で発見して終了ですもん。しょうがないんですけれど、なんだかなぁという気持ちはいかんともしがたい。

 で、お待ちかね郷田九段と三浦八段との対局。入場は開場の左右の扉から客席を通って舞台へと上がります。通路にいた僕は郷田九段の着物に触っちゃった(はあと)。でまあ、内容については棋譜が公開されているのでそちらを見てもらうとして、次の一手クイズの手がねぇ、ちょっとひどかった(笑)。先手郷田が棒銀で▲1五銀まで突っ込んだ局面に後手三浦が△3五銀と受けたところ(画像がないのは我慢してくれ)。郷田の棋風からいって断固戦うだろうと、僕は▲6五歩を予想し、大方攻撃の手を読んでいたわけさ、会場は。ところが開けて吃驚、手損の▲2六銀。みんなで仰け反りました。対局後あっさり「お客さんには(この手は読めないだろうと思って)悪いと思いました」と郷田九段告白。「実は△3五銀を見落としてました」っておい!

 終盤、郷田圧勝か、と思っていたら実は調べてみると負けっぽいということがわかって面白かったですね。その場では変化が多くて説明し切れていなかったですが、やっぱりこういう勝つか負けるかみたいな勝負は面白いですね。競ってないとやっぱ。

 対局後、プレゼント抽選会で勝者郷田がプレゼンターとして働いておりました。跳ねた後は会場出口で来場者にご挨拶してました。三浦八段辛いなー。

 終わったのは16時30分ぐらい。午後をまるまる使った感じですか。

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 全体の感想からいうと、もっと若い将棋ファンを集客できるようなイベント変えていかないとまずいぞ、ということです。実はJT将棋日本シリーズ、前日にこども大会というのを催しているんですね。それはいい。だけど、二日目のじじい連中との年齢の差というかさ、子どもとじじいとの間の年齢層を取り込む場所がないように思うんだよね。子どもがこの大会に参加して「将棋っていいな」って思う。中学になって高校になって、その将棋の情熱を続けさせるような受け皿がない、あるいはあってもごく一部(って詳しくないのでよーわからんけど)。折角なんだから、中学、高校の部も大会開けばいいのに。そうすれば、広い年齢層を取り込むことができるわけよ。「あー今年もJT将棋の季節だなぁ」と思って出かけるようになるわけよね、子どもから中学、高校と連続で。こうするとJT将棋日本シリーズのブランドはかなりのものになるんではないかと。そう思います。

 JTがその中学、高校の穴を埋めなくても良くて他の団体がどんどん主催してくれてもいいんですがね。ミッシングリンクを早急に繋がないと、折角の啓蒙も煙草の煙のように消えてなくなってしまうんじゃないかと。金を出してくれる企業、求む。


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初版公開:2005年7月17日 最終更新:2005年7月31日
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