美濃囲いの魅力


 この間の週刊将棋1000号に佐藤棋聖のインタビューが載っていて、その中で美濃囲いは堅くないという発言がありまして。何でも、△7二(▲3八)銀の形が良くないらしい。これは彼の持論なのでまあ、そんなものか、と思うけれど、「短手数で玉が堅くなるはずがない」というのは一理あるかもね。玉金銀の連絡を良くするにはそれなりに手が掛かるだろう、ということのようです。それによく指摘されるのが、玉に紐がついていないということ。追われると、玉のいた位置に駒を打たれるので粘りづらいということもありますね。また、端が弱いというのも佐藤棋聖に不評な点です。

 とはいえ、振り飛車党にこれほど長い間採用されているわけですから、それなりに愛用される根拠があるはず。ヒヒヒの飛で指摘されている、角筋と反対に囲っているのが一つ大きな理由でしょう。逆に居飛車側では振り飛車の角筋が玉に伸びているので結構気を使います。特に穴熊、左美濃のように深く囲おうとするときには心しておかなければなりません。藤井システムなどは角筋が命だったりしますものね。というわけで、角筋直射を避けているため居飛車よりちょい得。あとは進展性による急戦〜持久戦への対応力でしょうか。美濃〜高美濃〜銀冠という強度を極力落とさず移行出来るという点は魅力の一つ。手詰まりしづらいというか。最近では居飛車もまったりしていますから、手待ちの有効度は落ちていますが、銀冠まで持っていければそこそこ勝負になると思います。美濃の弱点だった端も強化され、玉への紐が付きますからね。もっとも移行するのは注意が必要で、特に銀冠にするさい、銀を上がった瞬間が一番弱体化しているので、相手の様子を見ながら組替えなければなりません。銀冠はプロでも人気がある、と島八段や鈴木八段が語っている強固な囲いなので、そこまでいけば十分です。美濃囲いじゃないですけれど。

 高美濃、銀冠では桂を跳ねることが多いですが、この桂馬が攻めに参加することによって居飛車の玉頭から5筋当たりまでの攻撃力が増します。玉の強度的は相当落ちますが(特に端)、一手で攻撃力を増強できるメリットがある。攻め重視・守り重視を選択できるというのも他の囲いにはない特徴です。ちなみに大山15世は桂跳ねは好まなかったそうな。

 ま、美濃囲いは強度うんぬん、というよりそこからのバリエーションの多さによって使い分けができる点が魅力なんではないかと、そう思いますね。


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初版公開:2003年7月12日 最終更新:2003年7月19日
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