何でも有料化する愚


 今期の名人戦は、いい勝負が続いているね。見所が多くて楽しい。一局目の森内名人の踏み込み(41手目の▲3四歩)や、二局目で出た絶妙のタイミングで受ける▲7九歩なんかは十分、手に汗握らせてもらった。これでこそ、歴史ある名人戦にふさわしい勝負となったわけで、拍手、拍手。んが、その好勝負に水を差すような主催紙のこんな告知、ご存じですか?

 棋譜速報が、5月1日正午から有料になりました。

 なんでも、『1カ月500円(税込み)の料金を払うと、対局にあわせて将棋盤の上の駒がほぼリアルタイムで動く速報と、控え室の検討の様子がわかる原稿が、何度でもご覧になれます。』だそうです。さらに、前々期までのA級順位戦の全対局と、名人戦の棋譜も見られるんだそうですよ。……ホントにね、いい加減にしてもらいたい、将棋関連の人たちには。こんなサービスに500円も払う奴なんざいないっちゅうねん。本気で登録してくれる人がいるって思っているのだろうか。支払うにも、nifty に ID 登録したりとか必要で、なにかと面倒だし。

 このように棋譜の開示に制限をかけることで、さらに将棋離れが増えていくのがわからないのか。そもそも翌日には公開されるのですよ。ちょっとした金を稼ぐために、どんどんファンが減ってゆくし、少なくともあまり毎日のサイトには行かなくなりますよね、そんなことをすれば。そもそも有料化計画に伴って、リサーチしたりとかしたのだろうか? これでいける、と思って踏み切ったのか? そこら辺の意図が全く見えない、近視眼的で場当たり的な方策ですね。

 サービスの値段というコラム?があるが、なんでも課金システムがなかったからタダだったとか、おっしゃっている。気づかないかなあ、ネットで課金制度が進むと、様々なサービスがフラットになるから、よほど競争力がないと負けるんですけど。「有料ならそれに見合うサービスが伴わないと申し訳ない」と書いてますが、見合っているとは到底思えませんよ。それに「ファクスや携帯電話で提供する名人戦のサービスはすでに有料だ」というけれど、有料サービスの利用者の数は如何でしょうか? 利用者っているんですか? 中原誠専務理事の「有料化は時代の流れですね」っていうもの、どうなんですか。スポンサーにいいなりっていうのも、ねえ。

 チャンスなんですよ、毎日にとっては。読売のWebサイトでは有料で情報サービスを行っているけれど、そことは違う価値を提供できるでしょ。思い切って、棋譜をオープンにしてみなさいよ、今将棋連盟を説得すれば、ファンの歓心を買うことができるって。伝統ある棋戦が踏み切れば、他の棋戦も追随するでしょう。後年必ず報われると思う。賞金で負けている、席順で負けている今こそ、有料化に右ならえではなく、将棋界を一新していこうという気概を持ってくれよ。サラリーマンにロマンを求めるのは無駄、なんですかね。


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初版公開:2003年5月3日 最終更新:2003年5月10日
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