将棋世界のダメなところ


 前略、将棋世界様。あなたは一体どんな雑誌を目指して編集されているのですか? 2003年1月号よりリニューアルした、とありますが、一体何が変わったのでしょうか。デザイナーが変わったので、内容の順番や、記事のレイアウトは変わったのかもしれません。見た目がよくなったのでしょうか。それにしては中身がまったく変わっていないように思います。

 日経新聞2002年12月19日夕刊に出ていた特集記事によると、将棋誌(将棋世界、近代将棋、週刊将棋)の合計が全盛期に比べて半分以下に落ち込んでいるようですね。25万部が10万部以下だとか。ところでどれが一番零落しているのでしょうね。

 内容について、ダメなところ。それはまったく冒険しないその態度と、基幹となるどっしりとした編集方針がないことでしょう。

 冒険するというのは、誌運を賭けた一大企画を立てるということです。以前、それに相当した企画といえばアマプロ平手戦や、升田幸三に若手をぶつける企画、などでしょうか。つまりは現在の権威に牙を剥くということでしょう。完全に機関紙となっている将棋世界では無理な話でしょうかね。現代でいえば、アマプロ(男女問わず)の順位をレーティングで換算して発表するというのはどうでしょう。そうすれば、限りなく現実の実力に近い順位がでることでしょう。もちろんここでは、先輩後輩、しがらみ、見栄、などといった数々の障壁を無視することができます。例えば。公開真剣勝負。お互い大金の対局料を賭けるというのはどうか。今の対局は勝っても負けても生活に対して響かない勝負が多すぎる。生きるか死ぬかのギリギリのものがない。だってよ、頭を剃ってまで勝ちたいと思う勝負が年間どれぐらいあると思うか考えてみるがいい。例えば。A級対フリークラスの駒落ち対局。プライドを賭けるのであれば、三段陣対フリークラス、またはアマチュア対フリークラスというのも面白い。ライバル対決を演出するという手もあるだろう。

 自戦記にしても、両者の心理にまで迫ってくる名文がほとんどと言っていいほどないという質の低さ。棋士が怒り出すようなところまで踏み込もうとしない気概のなさ(勿論、踏み込まざるを得ないところまで考え抜いたあげく、という前提条件ね。単に踏み荒らすような無神経なものではなくて)。またはその編集方針。きれい事なんて誰が読みたいですか。自戦記は棋士二人と記者との勝負でもあることを忘れてはいけないでしょう。

 結局は、無難なものを作るという編集方針が凋落の原因なんです。なんでそうなるかというと、編集者が棋士故に、完全な自己批評ができないという構造的欠陥を抱えているから。つまり編集方針以前の問題があるわけです。客観性を取り戻し、自己撞着を解消するためにも、外部から編集長を招聘するべきだと思うのだけれど。しがらみが多くては下で働いている人も、購読者も、将棋連盟もみーんな報われずに廃刊の憂き目に合うことでしょう。体力がある内に(もうないか?)荒治療するべきではないですか。


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初版公開:2003年2月1日 最終更新:2003年2月8日
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