羽生世代の次


 ニューチャイルドブランドと称された三段リーグの低年齢層(14歳〜17歳)の棋士の卵達がいる。週刊将棋で一度特集を組まれ(2002年10月9日〜30日)、その存在が知られるようになった。中でも三段リーグ初参加ながら、リーグトップの勝ち星(九勝一敗)を挙げている佐藤天彦三段は現在14歳。このまま一期抜けとなると、羽生に次ぐスピード出世となる。中学生棋士は必ず名人位に就く、というジンクスがあるので彼にもその期待が掛かる。加えて彼は関西所属であり、東高西低の今の棋界を揺すぶるような存在になるかもしれない。だのに、マスコミも棋界もまーったくといっていいほど取り上げないのは何故? あまり騒ぐと彼のためによくないから、ということで緘口令でも出しているのかね。それとも、彼の価値に気づいていないとか? まさかね。

 その筋では評価の高い中村亮介、高崎一生など期待をさせる若手も順調に伸びてきている、らしい。週刊将棋での鈴木七段の評価は、流行戦法には敏感で、勝ち方の要領がよく、しかし勝負に淡泊で力強さが足りない、とのこと。いかにも現代的(無個性、無難)といった将棋なのだろうか。まだ個々人の特徴が目に見えて現れてきてはいない感じだ。ただトップに立つ棋士というのは、かなり個性的な棋風を纏うものだし、その芽はすでにでているはずだから、記者や鈴木七段には理解できない、新しいタイプの才能がすでに出ている可能性がある。

 その他、有力な三段、二段もごろごろいるらしい。強力なライバルが揃ったニューチャイルドブランドは、実力を磨くという点では恵まれているのかもしれないね。ただ、同世代のライバルがいなくともトップに君臨した谷川王位や、中学生プロ三人目の渡邊四段などはそんな環境がなくとも四段にあがったのだから、才能という点では二人に劣るのかもしれない(正確には、谷川の場合奨励会員全員が谷川潰しと称して全力であたったそうだ。渡邊の場合はよくわからない。そういった逸話が流通していないから)。あるいは、ライバルと呼べるほどの強い相手がいなかったので才能をつぶされずに済んだ、ともいえる。

 佐藤天にはこのままストレートで昇段してもらって、コピー将棋を一掃し新しい風を吹き込んでもらいたいものだ。願わくは、オーラを感じさせるスケールの大きい将棋指しになっていただきたい。


追記

 結局、佐藤天彦三段はリーグ後半に連敗を喫し、次点となってしまった。無念なり(2003/03/31)。


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初版公開:2003年1月18日 最終更新:2003年3月31日
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