古きを尋ね……

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 江戸時代からほぞぼそと続いている将棋界にも受けついできたものがあって、それは定跡書であったりする。大橋本家、分家、伊藤家といった将棋三家が勢力争いをしていた時期など、おのおの秘伝書があったりしたのだと想像できる。名誉と実益がかかった勝負に備えて一門内での研究がひっそりとまとめられ大事にされていたんじゃなかろうか。棋譜はあまり残っていない(公開されていない、されていても簡単に手が届かない、故に素人では昔の棋譜を楽しめない)が、「無双」「図巧」のレベルを考えると、とてつもない名勝負に出会える可能性がまったくないとは言い切れない。

 こういった古棋譜の情報収集整理作業というものは、現代戦術の整理以上に進んでおらず歯がゆい思いがする。将棋が文化であると喧伝するのなら、過去を総括する必要があると思うのですよ。そういった作業がおざなりなっていませんか>日本将棋連盟。昔の知恵だからといって取るに足りない、なんて思っていては足下をすくわれますよ、ってもう遅いか。

 本来やるべき組織がやらないのであれば、やりたい人がやるしかなくて、しかしこれは個人で調べるとなると結構大変だったりするわけで。過去の資料をあたるには国会図書館や、地方の資料館などに足を運ばなかったりしなくてはいけない。趣味でやる分にはいいですけれど、自己満足で終わって折角の情報が失われてしまったり、評価を受けないから質が悪いままだったり。そういった仕事が将棋界、将棋ファンにフィードバックされないのはもったいないですよねえ。現行ではすくい上げる仕組みもない。将棋ペンクラブ? 売れた本、仲間本を表彰するなかよし団体ですから、気骨のある研究書なんぞ取り上げるなんてことは考えにくいですね。勝手にやってて下さい。

 で、とにかく古棋譜や昔の将棋の話しなんかをもっと手軽に入手できないかなと考えていたら、国立国会図書館がやってくれました。近代デジタルライブラリーというサイトで、明治期刊行図書を閲覧できるデータベースの公開を始めたのです。いまさらかよっ、とか、遅っ、という声はありますし、明治期だけかよっ、という気分も抜けませんが自宅で明治時代の書籍が無料で読めるというのは大変喜ばしいできごとです。「将棋」で検索すると天野宗歩の将棋精選がある(アカシヤ書店なら25,000円ですよ、奥さん)し、幸田露伴の将棋話も読むことができるんである。まだ書籍の数は全然少ないけれど、追加される予定もあるようだし期待できる取り組みでしょう。問題は、文語文を読みこなせる読解力がないことであるな。誰か現代語訳に翻訳してくれない? あと読みづらいからテキスト入力して青空文庫なんぞに登録してくれないかな、とすっかり他人まかせな今回の戯言でございました。


TOP将棋戯言前の戯言番外編

初版公開:2002年10月12日 最終更新日:2002年10月12日
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