端歩あれこれ

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 一昔前は端歩を突くのは心の余裕、などといったもので、決戦前に突いたり、一悶着あって局面が落ち着いたときに突いておくような呼吸やリズムがあったようです。真部八段がそんなことをどこかで書いていたような。

 現代将棋における端歩はそういった牧歌的なものではなく、シビアな計算の元、作戦勝ちを狙うためや攻撃の手がかりという明確な役割が与えられておりますね。藤井システムにおける序盤の端歩突きはその代表といってよいでしょう。先手番ゴキゲン中飛車では端歩を突かないと上手く組めなかったりします。相懸かり、矢倉系の将棋では、端歩を突き合うか突き越すかで作戦ががらっと変わってきますし、対ひねり飛車での端歩の攻防は結構熱いものがありますな。

 例えば下手に端歩を突きあったばかり、棒銀に変化されて作戦負けになったり、持久戦模様で端を付いておかなかったために手詰まりが早めに来た、という経験は誰しもあるところでしょう。美濃、矢倉、穴熊といった代表的な囲いは端を絡めた攻撃には案外もろかったりしますし、対振り飛車急戦を指しこなすには端攻めのタイミングがすべてといっても過言ではない、と高段の友人がいっておりました。

 というわけで、端をあまり甘く見てはいけません。決戦の発端になったり、王様の逃げ道になったりと一つ突いておくだけでたくさんの恩恵を受けられるのですから。王様側の端歩を二つ突くことが出来れば金一枚分ぐらいの守備力になるんじゃないでしょうか。

 もちろんいいことばかりではありません。端に手をかまけるということは、中央の手の進みが必然的に遅れてくるわけですね。相手が天王山で決戦をしようとしているのに端を突いていては簡単に突破されてしまいます。常にバランスを心がけましょう。

 ところでかの升田幸三は、端歩を受けずに戦っていることが度々ありました。中央よりの手のほうが価値が高いと思っていたようで、端歩なんぞを突いている暇なんぞないわい、とどこかで語っていた記憶があります。ここらへんの感覚は棋力や時代によって移り変わっていくようです。


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初版公開:2002年9月21日 最終更新日:2002年9月28日
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