負けを宣言する

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 ゲームには勝利と敗北があって、ゲームの終了はルールより決定されますが、二パターンあります。1.一つは、お互い最後までプレーし結果を比較後、ルールに従って勝敗が決まるケース。野球、サッカー、剣道、柔道、麻雀等々の競技があります。2.もう一つは、勝ち目がないと見た敗者が負けを宣言することで勝敗が決まるケース。将棋、チェス等が代表でしょうか。

 敗者が負けを認めて終了、というのは特殊な例なのかもしれないなあと思うわけです。理屈で言えば、将棋だって王様が動けなくなるまで指せば、1.のケースで裁けそうなものです。なのに負けた、なんて自分で告白して終了するなんて! 変な慣習だと思いません? 野球でも九回裏、10対0で負けていてもこりゃ負けだ、っていって試合終了することなんてありませんよね。もっとも精神的には負けた、とか思っているかもしれませんけど。

 プロ将棋ではいくつかの理由があるようですね。1.相手を信用しているため、指しつづけても意味がない。これは傍目から見ていてはわかりませんが、高段者同士の暗黙の了解です。逆転の可能性がない、というわけですね。現実には、相手が心臓発作を起こしたり手が滑ったりしてミスを起こさないとも限らないわけですが、そんな相手の失敗を期待してはみっともない、志高く指すのであれば、棚ボタ狙いなんて持ってのほか、という美学に反するようです。もっともこの美学は一部の棋士を除いて消滅しているようです。2.棋譜が汚れる。プロでは棋譜を芸術作品として考える傾向にあります。ですから先ほどのように明らかに負けがわかっているケースでは、無様な手順を残さないようにするわけです。初心者のために、テレビ将棋や大会の将棋では最後まで指すことがままありますが、タイトル戦のような大舞台ではおそらく、ないはず。この場合も、美学より実利を重んじる現代では失われています。

 本心ではないのでしょうが、「参りました」と負けを宣言するのはなんとも歪んでるなあという気がしなくもない。変なゲームだねえ。


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初版公開:2002年6月15日 最終更新日:2002年6月22日
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