内藤國雄九段を見に

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 出不精の私でありますがこの機会を逃したらもう二度と生きている内藤國雄九段を見ることはないだろうと思って、近代将棋主催「内藤國雄九段とともに見るベン・ハーの会」へ参加して来ました。場所は銀座、ル・テアトロ銀座というところで片田舎に住んでいる私には久々の都会です。疲れましたー。

 11:30受け付け、12:30から内藤國雄トークショー、そして休憩をはさんで14:20からベン・ハーを見るというプログラム。私は11:30きっかりに到着してしまったのですが、その時間になってもあたふたと机を用意したり、窓ガラスに「内藤國雄九段と〜」と書かれた紙をつけたりしていてまるで準備されていなかったですね。トークショー開始まで広場より階段上の少し広い踊場にいてくださいと永井さんにいわれてみんな移動。ああ、永井さん、お年を召されましたね、すっかりお痩せになられていますね、NHK将棋トーナメントの聞き手だったころと変わらない腰の低い丁寧な態度ですね、と思いながら開始まで暇をつぶそうとしていると、「今から内藤國雄九段、ベンハーの詰み手順を解説します」というじゃないですか。解説用の将棋盤は小さいは、見ているのは20人程度だはと少々寂しい感じでしたが、来てくれたお客さんへの気配りがうれしい。が、詰め将棋の解説ってあんましおもしろくないわけで、それがだらだら一時間もやられたんじゃつまんないのです。途中、観戦記者の田辺さんが見えたり(はじめて見たが、白髪、まん丸顔、けっこう肥えた体、ふーむ、結構年食っているんだな)内藤國雄九段が武者野六段らとともに現れたりしながら(武者野六段も体格いいよ。あんなに大きいとは思わなかった)私は話半分で持参した小松左京の本を読んでいた。

 12:30になり広場へ降り、並べられた椅子に掛け内藤九段を待つ。しばらくするとスーツに身をまとった内藤九段が中央マイクに立つ。内容は、ベン・ハーという詰め将棋がどうやってできたか、について自分の将棋人生を振り返りながら語っておりました。そのなかのお話を一つ二つ引用してみましよう。うろ覚えですが。

 「私なんて才能ないただの少年だったんですから。私が奨励会に6級で入会するときに、加藤九段なんて、ああ、彼とは同い年ですが、三段だったんですよ」

 えーっとこれは内藤九段と加藤九段が同い年というところに私が吃驚したので印象に残っているセリフ。

 「私が十代で望んでいた夢はほとんどかないましたね。三橋美智也の生声が聞きたい、美空ひばりさんと握手がしたい、NHK紅白の審査員をしたい、髭の先生、升田さんと飲み明かしたい。皆さんは升田さんと飲むのがいちばん簡単だろうと思われるかもしれませんがね、これが一番大変だった。私が七段のころ将棋会館でおはようございますと頭を下げても一言も返事をされなかった。27歳でAクラスにあがってはじめて、おっ、と言ってくださった。ああいう豪傑タイプはまず相手を自分の敵か味方か見極めようとするんようです(笑)。味方とわかるとよくしてくださった」

 「あんまり升田さんが酒タバコをやるんで、一日でタバコ600本(だったかな)酒二升やるんですから、健康にも気を使ってくださいといいましたら、まじめな顔をして『内藤君。将棋の肝はなんだ。バランスじゃ。人間もそうじゃ。年を取ると体のあちこちが弱ってくる。しかしワシの体は強くてな。だからわざとたくさんやってバランスよく悪くしとるんだよ』というじゃないですか。なるほどなあと思いましたね」

 なんでやねん! と思いますが升田さんらしい言い草ですよね。それにしても内藤九段の話は上手でした。いい思い出になりました。しかしスタッフの皆さんにはもう少しお客さんに対応してほしかったですね。例えばベンハーは近代将棋に載っているというのでその号を欲しいと思うお客さんもいるわけで、なのに用意していないとか。実際ないのかと聞いているおじさんがいた。受け付け時間中の詰め将棋解説は行き当たりばったりでお客さんを楽しませようという気持ちははわかるけれどやっていることは中途半端だった。お土産の内藤九段直筆サイン入りベンハー詰め将棋がかかれた色紙?もすんごい安っぽい。せめてベンハー杯争奪将棋大会とかにできなかったものかな。メインが映画鑑賞じゃあ将棋ファンの参加数が少ないのもしょうがないんじゃないですか。定員250名とありましたが100名もいなかったですし。全体としてイベントとしての計画が甘いんじゃないかしら、いつも言っていることですが。ディズニーランドにいってサービスすることとはなにか学んでらっしゃい!


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初版公開:2002年1月26日 最終更新日:2002年2月4日
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