米長永世棋聖のこと

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 私は米長邦雄永世棋聖があまり好きではなかった。好きでない、というより苦手だったのある。大げさなショーマンシップを発揮して観客を喜ばせるパフォーマンスに、うさんくささを感じていたからだ。省みてそれは、私自身のキャラに似ているからでもあった。

 「兄貴は頭が悪いから東大に行った」という話がある。ほんとかどうかわからない。しかし聞いた人は「おっ」って注意を払ってしまう。発言や行動に、将棋ファンでなくても注目してしまうのである。以前は売名行為か?とヘンに勘ぐったりしたものであった。

 しかし、最近の近代将棋の連載を読んでいると、どうもただの変人ではない、と思うようになってきた。試しに2001年6月の「みんなの将棋 プロだけではだめ!?」を読んでいただきたい。現在の将棋界、将棋連盟が陥っている状況を的確に指摘しているし、今後の方針や展望をきちんと述べてある。特に「世界への普及」のなかにある一文、

 一番問題なのは、アマチュアを10名出場させるから、その代わりに契約金もアップしますという新聞社側の申し出にあります。
 読者の興味、希望、要請を把握しているのでしょうから怖い。
 はっきりしているのは、プロ棋士だけでは華がないと判断されたということです。

 近代将棋6月号「みんなの将棋」より抜粋

 どうです、見事なものでしょう。ここまできちんと考えている棋士っていますかねえ? いやこの文章を読んで、はじめて棋聖のパフォーマンスの理由がね、わかったんですよ。つまりだ、将棋界のためですよ。盛り上げるためにやったんだろうと、思います。そりゃ闘いの前に、一言でも挑発文句でもでれば、外野は楽しいですものね。そういう計算があったのではないか、と思います(うがちすぎ?)。

 最近ではそういう棋界を考えている棋士というのが見あたりません。ずーっと米長棋聖が一手に引き受けていたところもあるんじゃないか。そういう業界を盛り上げて行く人物(キャラと実力)を育てるなり他の業界から引き抜いてくるなりしておかないと、やっぱしまずいでしょう。棋聖はNSNの行き先も駄目だろうと、はっきりは書いていませんがにおわせる文章を書いています。そんでもって将棋倶楽部24に力を貸すとも明言している(これは米長邦雄の家を参照)。うーん、こういう柔軟なところがすばらしいね。50歳を越えてパソコンをはじめHPを作ったりしているそうです。というわけですっかり評価を変えて米長棋聖のファンになってしまった今日この頃です。

関連HP

米長邦雄の家
米長邦雄ホームページ


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初版公開:2001年04月28日 最終更新日:2001年05月05日
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