戦記を読む


 ジュリアス・シーザー「カエサル日記」、羅貫中「三国志演義」、日本では「平家物語」「太平記」など戦記物はたくさんあります。人間が織りなす一大絵巻には、人間の苦悩、悲しみ、喜びがぎっしり詰まっていて、そういった感情の起伏や時代背景が読者の状況と相まって感動させるのでしょう。戦記物は特に生死が多く描かれていてそれがまた儚さをさそったりするようです。

 なーんてみえみえの前フリをしつつ。

 将棋の対局のあとには棋譜が残ります。これも一つの戦記なわけですね。対局者の感情がたくさん練り込まれている。であるからしておもしろくないわけがありません。棋譜を読むことは戦記を一つ読むということ、人生をひとつ読むということ。

 棋譜をそのまま読む、並べるというのもオツなものですが、自戦記、観戦記を読むという手もあります。自分の視点から描かれる自戦記はカエサルの視点、戦線の先頭に立った者の言葉が綴られています。緊迫した状況や実戦真理、息づかいが聞こえてくるでしょう。観戦記は歴史書です。戦争を客観視した視点が盛り込まれ、より全体的な戦争(対局)の意義、両者の冷静な比較が行われています。

 最近では先崎学八段の自戦記が最高でしょう。彼の苦悩や喜び、実戦心理が伝わってきます。観戦記なら青野九段の本がお勧めです。対局場の説明や戦型の流行、両者の心理状態など細かく解説してあって読んでいてよくわかります。真部九段が将棋世界に連載中の「将棋論考」は時代にこだわらない棋譜を語っていてこれも興味深いですね。

 web にも自戦記はいくつか存在しています。その代表格は将棋自戦記職人組合でしょうか。手前みそですけれど。専門的な解説は期待できませんが解説口調はおもしろく、アマチュア棋士の心理状態が的確に表現されていてニヤリとできます。

 今日もどこかで戦争が行われているのです。


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初版公開:2000年12月02日 最終更新:2002年11月3日
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