対局場所一考


 対戦相手をどこでみつけるか。将棋をたしなむものとしては結構切実な問題である。最近では将棋好きをはっきりと表明している人間も少ない。「将棋好き」を告白することは一種の罪悪である、といった風潮があるのかもしれない。ダサイのか? どうなのであろうか。友人は将棋好きである私を一瞥して「ダサイ」と剣もホロロであるが、これは私の将棋好きであるという性質に向けられたものなのか私個人の資質を指すのかはこの際不問にするとして。っていうかダサイってやっぱ死語? 隠れ将棋好きは世間のダサイ視に耐えているのだろうか。そしてそういう風潮を感じ取れていない私はまったくもってダメなのだろうか。とりあえず将棋好きはカミングアウトして下さい。

 対戦相手もそうだが今度は対局場所っていうのがこれまた少ない。設備が少ない、常備されていないというか。学校にはある。うん。そうだね。職場にもある。おそらくあると思う。碁石の方が多いかもしれんが会議室の隅にひっそりありませんか。そうですか。ありませんか。うむむ。ちょっとぉよく見てよ。……あるということにしておいてください。多分あるはず。あるってば。で次に自宅にある。昔はあった。今はないかも。我が家はこの間買いました。家にないととりあえず将棋との接点が完全になくなっちゃいますから常備しないといけません。で。あと昔はよく道端で指しているおっさんを見かけたような記憶がある。観客もいたかな。そういう道端って、娯楽が少なかった時代にはあったかもしれないけど今じゃとても無理だね。道狭いし。あと道場ってところもある。あるけれど全国にたくさんあるって訳じゃないし。あとは旅館とかかな。結構気軽に将棋ができる場所って多いようで少ないのです。喫茶店とかマックに置いていないのはなぜなんだ! マックはちょっと無理かもしんないけどさ。喫茶店はありと思うよ。あ、飲み屋にも置いてあるとこあるね。でも酔っぱらっているんじゃいい勝負は難しいやね。うむ、決定的な空間が少ないっていうのが現状かな。生身の人間が向かい合って戦うといった、勝負の臨場感を全身に感じる醍醐味は失われつつあるようです。

 ところでこの対戦相手と対局場所をいっぺんに入手できるんですね、現代は。インターネットです。もう猫も杓子もインターネットですね。バーチャル対局ですよ。全国どこからでも場所を問わずどんな時間でも(対戦相手が起きていれば)対局が可能。何時アクセスしてもひとりもいないってことはないんじゃないか。そんなわけで実にあっさりと問題解決一安心。ってわけにはいかない。インターネット将棋だってもちろん問題はある。まず第一に感想戦がやりづらいってことがあげられます。意見もいちいちタイプしないといけないので面倒だし対戦相手がチャットを苦手にしていたら意思疎通は無理です。第二に匿名性から来る失礼な言動や指し手がでやすい。おそらくそういう人は少ないとは思いますがしかしその可能性はある。生身の相手だとそんなことできないでしょ。怒られるし身元がばれてるし。ネット上ではある程度匿名でいられるから無謀もしやすいんでしょう。そういう人と出会う可能性があるだけでマイナス。一方的っていうのがね。第三にネット将棋は緊張感が薄れるのです。緊迫感が薄れる。っていうのも自宅にはいろんな環境があるわけです。子供がうるさかったりするだけで集中できないとか。とまあ、いくつか問題はあるけれど将棋が簡単に指せる環境ってやっぱり魅力的。もっと性能のよいシステム(落ちないとか悪さするユーザーをうまく閉め出すとか)になればいいと思う。このインターネット将棋のおかげで再び将棋を指すきっかけにもなっているんじゃないだろうか。いいことである。


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初版公開:2000年11月11日 最終更新:2002年11月1日
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